電撃性紫斑病の臨床的検討―本邦における原因菌の特徴を含めて―

  • 久保 健児
    日本赤十字社和歌山医療センター救急・集中治療部
  • 千代 孝夫
    日本赤十字社和歌山医療センター救急・集中治療部
  • 岡本 洋史
    日本赤十字社和歌山医療センター救急・集中治療部
  • 松島 暁
    日本赤十字社和歌山医療センター救急・集中治療部

書誌事項

タイトル別名
  • Purpura Fulminans (Symmetric Peripheral Gangrene) : 7-year Consecutive Case Review in Japan
  • デンゲキセイ シハンビョウ ノ リンショウテキ ケントウ ホンポウ ニ オケル ゲンインキン ノ トクチョウ オ フクメテ

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説明

【目的】髄膜炎菌の侵淫度が低い本邦では,急性感染性電撃性紫斑病(Acute infectious purpura fulminans ;AIPF)はまれであり,診断に至らない例が少なくないと思われる.そこでAIPF の臨床的特徴および本邦における原因菌について検討した.【方法】(A)2001 年から2008 年に当施設で経験したAIPF 6 例を後方視的に検討した.検討項目は,背景,発症場所,原因菌,症状,所見,治療,脾機能の推移,転帰とした.(B)医学中央雑誌(1983~2008 年),PubMed(1952~2008 年)を全年検索し,AIPF の原因菌として記載のあるものを集計した.【結果】(A)44 歳から69 歳で,男性5 例,女性1 例であった.5 例は市中発症で,脾臓摘出や免疫低下の病歴のない健常な成人で,4 例が肺炎球菌感染症,1 例がレジオネラ肺炎であった.1 例は院内発症で,グラム陰性桿菌疑い(エンドトキシン血症)であった.初期症状は気道,消化器症状を伴う発熱で,12~96 時間以内に全身の紫斑を呈し,臨床的にAIPF と診断した.6 カ月後死亡率は33.3%で,救命しえた4 例はいずれも二肢以上の切断を要した.来院時の脾臓の大きさは8~223cm3 と様々で,経時的に拡大または縮小した.(B)本邦で過去26 年間に新生児を除いたAIPF 報告は47 例あり,うち40 例が成人で,肺炎球菌が最多であった.57 年間のPubMed 集計では髄膜炎菌が最多であった.【結論】AIPF の原因は,海外では髄膜炎菌の報告が多いが,本邦では肺炎球菌が最多であり,成人に多く,四肢切断率,死亡率が高い.早期診断のポイントとして,脾機能低下がなく健常成人であっても,また感染巣が明らかでなくても,感冒様症状から急速に進行する全身の紫斑を見たら疑うことが重要である.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 83 (6), 639-646, 2009

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (6)*注記

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参考文献 (28)*注記

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