書誌事項
- タイトル別名
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- Epidemiological Study of Methicillin-Resistant <I>Staphylococcus aureus</I> Isolated from the Urology Ward in 2003
- Epidemiological Study of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Isolated from the Urology Ward in 2003
- Nosocomial Infection and Community-Acquired Infection
- 院内感染と持ち込み感染について
抄録
2003年1月から12月までの1年間に入院患者および医療従事者の尿以外の検体から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) を対象に, コアグラーゼ型別, エンテロトキシンタイプ, ムピロシンに対する感受性, パルスフィールドゲル電気泳動 (PFGE) によるDNAパターンの解析など細菌学的性状と患者の基礎疾患, 入院日数, 病室の位置関係など臨床的背景を比較し, 感染経路を明らかにすることにより, 院内感染防止の一助とすることを目的とした.<BR>病棟スタッフの鼻腔内MRSA保菌調査では, 医師の保菌率が高く, 全体では, 17.6%であった. さらに, 医師と看護師の各1名から分離された鼻腔内MRSA中にムピロシン耐性株が検出された. 2003年に泌尿器科病棟から検出されたMRSAは, 18名の患者より20株が同定された. その内訳は, 創部から8株, 喀痰・鼻腔から7株, 血液から3株, 前立腺から2株であった. ほとんどの患者が全身麻酔の必要な手術を受けているか, 癌の末期患者であった. 細菌学的性状が類似する株は存在したが, 同時期に同室から2名以上の患者が発生することはなかった. また, MRSAの発生頻度が高い病室は存在したが, 落下細菌やスタンプによる環境感染調査では検出されなかった.<BR>以上よりMRSAの感染経路は, 患者間による環境を介した経路は考慮しがたく, 病棟スタッフが関与した感染および一般社会に広く蔓延しつつあるMRSAによる感染である可能性が高いと考えられた.
収録刊行物
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- 感染症学雑誌
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感染症学雑誌 78 (9), 853-864, 2004
一般社団法人 日本感染症学会