都市水系および沿岸海水における腸チフス菌の生残

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タイトル別名
  • Survival of <I>Salmonella typhi</I> in Urban Water System and Coastal Sea Water
  • トシ スイケイ オヨビ エンガン カイスイ ニ オケル チョウチフスキン ノ セイザン
  • Survival of Salmonella typhi in Urban Water System and Coastal Sea Water

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説明

都市水系および沿岸海水における腸チフス菌の動態を明らかにする目的で, 下水, 河川水, 河口水, およびそれらの流入する沿岸海水を経時的に採取し, 腸チフス菌を105/mlの菌濃度に添加して検水採取時の平均水温における生存菌数の消長を観察した.<BR>いずれの検水においても, V-WあるいはS-R変異はほとんどみられなかつたが, 腸チフス菌の生存菌数は時間の経過とともに減少した. 当初の生存菌数からその1/10に減少するまでの時間 (T1/10) を生存期間指数として日数で表わした場合, 水温15℃以下では2.3~7.8日であるのに対し, 水温25℃ 以上では0.4~2.4日と大きく減少し, 有意差を認めた (P<0.01). また水温とT1/10との問には高い逆相関が認められ, 下水, 河川水, 河口水, 海水における相関係数はそれぞれ-0.73,-0.96,-0.90,-0.77であつた. しかしT1/10については検水間に有意差はみられず, また検水のpH, Cl-濃度, BOD, COD, 一般細菌数, 大腸菌群数との間にも, 水温の場合のような明瞭な関係はみられなかつた. 検水をメンブランフィルターで濾過除菌した場合には, 増殖もしくは生存期間の大幅な延長がみられた. したがつて原水中での腸チフス菌の菌数減少は, おもに検水中の微生物による捕食およびそれとの競合によるものと考えられ, またこれらの殺菌活性は水温に比例するものといえる. 以上の所見から, 腸チフス菌の都市水系における生残率は夏期にもつとも低く, 冬期にもつとも高いといえるが, この冬期においては, 本菌が下水あるいは河川水に混入した場合には沿岸海域にまで流出し, そこで夏期に比してはるかに長期間生存するものと思われる. パラチフスB菌と赤痢菌についても同様な結果が得られたが, 生存期間としては赤痢菌のそれがもつとも短く, ついで腸チフス菌であり, パラチフスB菌のそれがもつとも長い傾向にあつた.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 48 (11), 426-434, 1974

    一般社団法人 日本感染症学会

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