高アジモニア血症を伴った肝性脳症における糞便内<I>Bacteroides</I>の意義

書誌事項

タイトル別名
  • Significance of Faecal Bacteroides in Hepatic Encephalopathy with Hyperammonemia

抄録

最近では肝性脳症の成因としてアミノ酸比の変動が挙げられているが, 血中アジモニアの上昇が脳症発現の一大原因である事には変りはない.その血中アジモニア上昇には大腸内urease産生菌によるアジモニア産生が重要でありurease産生菌としてはProtezts, Klebsiella等の好気性グラム陰性桿菌が主であると従来信じられてきたが, 最近, 糞便中の最優勢菌である嫌気性グラム陰性桿菌のBacteroidesにも好気性菌に勝るurease活性が存在する事が判明し, 肝生脳症では嫌気性菌がアジモニア産生の主体をなす事が考えられる.われわれはこの点を, 好気性グラム陰性桿菌は抑えないが嫌気性グラム陰性桿菌を抑える非吸収性抗生剤vancomycin hydrochlorideを用いて検討した.方法としては肝硬変の肝性脳症出現例で血中アジモニア値上昇を伴った5症例に, vancomycinを7~33日間繰り返し経口投与し脳症の症状, 血中アジモニア値, 脳波所見, 糞便19中の菌種, 細菌数の変動を検索した.結果は5例全例で繰り返し脳症の改善, 血中アジモニア値の下降, 脳波の改善を認め, それと共に糞便中の嫌気性グラム陰性桿菌のBacteroidesの著減を認めた.又, 投与中止によりBacteroidesの増加と共に脳症が再出現した.肝性脳症の出現には嫌気性グラム陰性桿菌のBacteroidesが重要であり, これを抑える非吸収性抗生剤vancomycin hydrochlorideが脳症の治療に有効であった.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 60 (1), 15-24, 1986

    一般社団法人 日本感染症学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205050372864
  • NII論文ID
    130004329085
  • DOI
    10.11150/kansenshogakuzasshi1970.60.15
  • ISSN
    1884569X
    03875911
  • PubMed
    3088172
  • データソース種別
    • JaLC
    • Crossref
    • PubMed
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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