HFRS流行後の本学関係者における疫学的検討

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タイトル別名
  • An Epidemiologic Study on HFRS After Six Years Surveillance-Comparison with Antibodies for Two Virus Strain, Hantaan Virus 76-118 Strain and WKM Strain in Members of College
  • HFRS流行後の本学〔和歌山県立医科大学〕関係者における疫学的検討
  • HFRS リュウコウゴ ノ ホンガク ワカヤマ ケンリツ イカ ダイガク カン

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抄録

HFRS流行後6年経った現在の実験用入荷ラットと本学関係者 (n=590) の抗体保有状況を, Hantaanvirus 76-118株 (76-118株) とWKM株を用いて間接蛍光抗体法 (IFA) にて検討した.<BR>(1) 流行後入荷ラット (1982年~1984年) には, 2~9%の陽性率で低抗体価 (16倍~128倍) ではあるが抗体陽性のものが持続してみられた.<BR>(2) 前回発症者及び抗体陽性者以外に両株に対する抗体保有者が新たにみられ, それらは典型的な症状を示す重篤な症例は1例もなく自覚的に無症状のものがほとんどであった.<BR>(3) 抗体陽性率を両株で比較してみると, 76-118株: WKM株では, 陽性基準を変えてみると, 16倍で11.6%: 12.1%, 32倍で5.3%: 6.2%, 64倍で2.3%: 2.5%を示し, 両株間では有意差はみられなかった.<BR>(4) 陽性基準を64倍とすると, 前回発症者の中でも陰性と判断される例があった. また, 今回抗体陽性者の中に1例のみ76-118株に陽性 (抗体価は32倍) であった.<BR>(5) 人血清抗体価では両株に対して差があり, A群 (76-118株>WKM株), B群 (76-118株=WKM株), C群 (76-118株<WKM株) の3群に分けて検討すると, C群は陽性基準を16倍とすると45%, 32倍では55%, 64倍では61%であり, A群との比較では1.3~1.7倍を示した.<BR>以上の如く, 抗体の陽性率では両株間で差はなくよく交叉することが示された. しかし, 抗体価の比較では差がみられ, 流行時ラットでみられた年次変化を反映した76-118株からWKM株優位への移行の傾向を同様に認めた. 更に, 陽性基準を高くとるとその差はより顕著になった. 一方, 症例によっては片方の株で陰性のものが存在することや, 現時点では76-118株優位, WKM株優位のものが混在してみられることから, IFAによるHFRS陽性者の判定には, 少なくとも76-118株 (Apodemus type) とWKM株 (Rat type) の両抗原を用いる必要がある.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 61 (6), 639-644, 1987

    一般社団法人 日本感染症学会

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