『ヒポクラテス全集』における排尿障害の記述について

  • 斉藤 博
    埼玉医科大学総合医療センター泌尿器科 現 友愛クリニック

書誌事項

タイトル別名
  • THE DESCRIPTIONS ON DISORDERS OF URINATION IN THE HIPPOCRATIC COLLECTION
  • ヒポクラテス ゼンシュウ ニ オケル ハイニョウ ショウガイ ノ キジュツ ニ ツイテ

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説明

(目的) ヒポクラテス (紀元前460年頃) は古代ギリシア, コスの有名な医師で, 彼の業績は, 後世『ヒポクラテス全集』に記載されている. 私は『ヒポクラテス全集』での排尿障害を検討した.(方法)『ヒポクラテス全集』での排尿障害をラーブ, 大槻, 今版で採集し, コス学派とクニドス学派とで排尿障害を比較した.<br>(結果) 排尿障害が67ヵ所 (文, または, 節): 排尿困難50, 尿閉15, 尿失尿2, または, 3 (排尿困難との合併が1) 記載されていた. 術語としてストラングリエ (滴状尿) は20ヵ所中コス学派12 (60%), クニドス学派5 (25%), ドゥスリエ (排尿困難) は30ヵ所中コス学派13 (43%), クニドス学派17 (53%) であったが, 有意ではなかった (X2検定で, p>0.05). 激しい疼痛を伴う排尿困難, 尿閉はコス学派の記載で認められた. ストラングリエは慢性化するが, 合併症がなければ死ぬことはない. 2種類の尿失禁があり, 多量の尿失禁と, 滴状尿失禁で, 前者は神経因性膀胱, 後者は溢流性尿失禁と考えられる. 尿道カテーテル法, 利尿剤が, すでに,『ヒポクラテス全集』に記載されていた. 瀉血法, 鎮痛剤が排尿困難の治療に用いられていた.<br>(結論) 排尿障害は4種類認められる. すなわち, 排尿困難, または, ディスリア, 滴状排尿困難症, または, ストラングリ, 尿閉と尿失禁である. 重症の排尿障害はコス学派の記載に多く認められる.

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参考文献 (17)*注記

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