男性仮性半陰陽

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  • MALE PSEUDOHERMAPHRODITISM

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抄録

男性仮性半陰陽は性腺として精巣が分化していながら内外性器系の男性化が障害される先天異常で, 極めて多彩な発生病理に基づく性分化異常症の一型である. 従来, 本症の分類は主として外性器の形態, 女性内性器の分化の有無, および思春期における二次性徴の性差を中心に行われてきた. しかし発生機序に関する要因は殆ど不明であり, 分類法での配慮は殆どなされていなかった. 近年, 性分化の機構に関する研究が大幅に進展し, Y染色体上に座位のある精巣決定因子TDFもSRY遺伝子として同定された. また胎生期精巣の分泌するミューラー管抑制ホルモン (AMH) に関する研究も進み, 内性器分化とその異常に関する知見も一新された. Androgen Receptor (AR) についても遺伝子のクローニングの結果, ARと genomic DNA との相互作用についても重要な情報が蓄積されつつある. 現在では, 古来の臨床的な分類に加えて, MPHを発生機序の面から捉えた分類法を確立し, 当面の患者に対しより適切な社会的な適応を目的とした性の決定を可能とし, その後の治療をも容易ならしめる基準を普及させる必要がある. 最近の傾向では, MPHをSRYおよび性決定に関連する一定の遺伝子の異常を含めた機序に起因する性腺分化の障害; 胎生期精巣より分泌される androgen およびAMHなどの性器分化誘導物質生成の障害; そして androgen receptor (AR) の異常に伴う感受性障害 androgen insensitivity の3つの要因に大別して扱う報告が多い. このほか性腺腫瘍, 腎腫瘍 (Wilms' tumor) あるいは腎障害の合併などを示す症例の存在も注目され, その発生機序の解明は出生前診断, 予防法さらには治療法の開発にもつながる重要な研究分野であると考えられる.

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