ボルナ病ウイルスの神経病原性に関する研究

  • 本田 知之
    京都大学ウイルス研究所ヒトがんウイルス研究分野

書誌事項

タイトル別名
  • Neuropathogenesis of persistent infection with Borna disease virus
  • 平成26年杉浦賞論文 ボルナ病ウイルスの神経病原性に関する研究
  • ヘイセイ 26ネン スギウラショウ ロンブン ボルナビョウ ウイルス ノ シンケイ ビョウゲンセイ ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

ボルナ病ウイルス(Borna disease virus: BDV)は,強い神経指向性を持ち,中枢神経系へ持続感染するマイナス鎖RNAウイルスである.自然感染した動物では,致死性脳炎から軽微な神経症状まで,様々な神経症状を呈する.BDV感染による病原性発現の分子メカニズムについては,未だ不明な点が多い.細胞非傷害性であるBDVの病原性は,必ずしもウイルス量に相関せず,感染細胞の質的変化・機能異常によるものと考えられる.これは多くの細胞傷害性ウイルスの病原性がウイルス量と相関するのと大きく異なる.本稿では,BDV感染による病原性発現機構について,私たちが見出した2つの現象を紹介する.グリア細胞は,BDV Pタンパク質発現により,周辺のIGFシグナルの異常を引き起こし,BDV感染病態を誘導する.一部の感染細胞では,BDV mRNAの逆転写と宿主ゲノムへのインテグレーションが起こる.この挿入配列は,BDVタンパク質のバランス変化,BDVを認識するpiRNA産生,周辺遺伝子の発現変化などを引き起こしうる.BDV感染動物では,これらが複雑に絡み合い,様々な症状を呈しているものと考えられる.

収録刊行物

  • ウイルス

    ウイルス 65 (1), 145-154, 2015

    日本ウイルス学会

参考文献 (36)*注記

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