産業組合による生産・流通過程の統制 : 無限責任竹館林檎生産購買販売信用組合の事例

  • 白井 泉
    大阪大学大学院経済学研究科博士課程

書誌事項

タイトル別名
  • How an agricultural cooperative in modern Japan controlled its stakeholders : the case of the Takedate Cooperative
  • サンギョウ クミアイ ニ ヨル セイサン ・ リュウツウ カテイ ノ トウセイ : ムゲン セキニンタケカン リンゴ セイサン コウバイ ハンバイ シンヨウ クミアイ ノ ジレイ

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説明

青森県竹館林檎組合は林檎取引に規格化と商標をいち早く導入した産業組合であり,多数の農家を結集して斉一性の高い「竹館林檎」の大量生産・流通を実現した。この組合は,大都市有力問屋と連携して高い評判を獲得したが,一方で一部の組合員は,良質な林檎を商人にひそかに売却する抜売に走った。組合はその対策に尽力し続けたが,狭い村落共同体の枠を超えた広域組合であったために,自らの意思に従って市場で経済的利益を追求する農家の制御は難しかった。第一次大戦後経済状況が悪化し,事業が停滞して以降は組合員の脱退も相次ぐようになり,遅くとも第二次大戦後には,組合は組合員による自主的販売を認めざるを得なくなっていた。本稿は,後進農業地域というイメージがある東北地方に設立されながらも農作物のブランドの確立に成功した産業組合が,高品質な商品を全国市場に流通させる体制の構築と維持に努めたものの,組合員の自由な販売活動を抑えられなかったこと,逆に言えば共同体規制に縛られず経済合理的に行動する農民を輩出していたことを示した。

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