育児が発育不良をもたらしたのか : 大正期の農村乳児を対象とした検討

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タイトル別名
  • Did the feeding process in rural areas cause decreased growth among infants during the Taisho era (1912-1926)?
  • イクジ ガ ハツイク フリョウ オ モタラシタノカ タイショウキ ノ ノウソン ニュウジ オ タイショウ ト シタ ケントウ

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抄録

本稿の目的は大正期の農村を対象として乳児の発育と育児との関係を検討することにある。まず,明治中期〜昭和初期の健康乳児との比較から大正期の農村乳児は乳児前期の終わりあるいは乳児後期から発育が悪くなっていたといえること,そしてその原因が母乳そのものか母乳の与え方にあると考えられることを示す。次に,産後の休養期間を代表する離床時期が習俗による規定よりも早まっていたことを明らかにし,離床が早いと乳児後期の発育が悪いという両者の間に正の相関関係を見出す。さらに離床時期が育児時間の代理変数になっている可能性を指摘し,具体的な育児として授乳行動が想定されることを示す。これらに基づき乳児の発育不良を授乳行動によって説明する仮説を立てる。それは次のような内容を持つ仮説である。大正期の農村では労働負担の圧力がかかったとき,母親が農作業中の育児を家族に委ね授乳回数を少なくした。少ない授乳回数は出産後早い時期から乳汁分泌量を減少させた。それにもかかわらず母乳だけで育てた結果,乳児の摂取できる母乳量が減ってゆき乳児前期の終わりあるいは乳児後期から発育不良が生じた。

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