企業創業地における近代化産業遺産の保存と活用 : 倉敷地域と日立地域の比較分析から

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タイトル別名
  • Conservation and Utilization of the Heritage of Industrial Modernization in Cities Where Corporate Groups Were Established : Comparative Analysis of Kurashiki and Hitachi Cities
  • キギョウ ソウギョウチ ニ オケル キンダイカ サンギョウ イサン ノ ホゾン ト カツヨウ : クラシキ チイキ ト ヒタチ チイキ ノ ヒカク ブンセキ カラ

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抄録

本研究においては,2つの歴史的企業城下町の中核企業の企業文化,及び企業と地域各主体の関係構造の差異に着目して,近代化産業遺産の保存と活用がどのようになされてきたかを分析し,両地域の保存活用の実践において違いが生じた要因を考察することを目的とする.対象事例は,歴史的な基盤産業と企業による創業地認識の点で代表的な近代化産業遺産の活用地域である岡山県倉敷地域と茨城県日立地域である.前者は前近代の域内商業・地主資本による農村工業化で発展したのに対し、後者の発展は新興財閥が軍需産業と結びついたものであった.戦後,両地域における産業の展開は大きく異なるものとなった一方で,両地域の中核企業は独自の企業文化を背景に,企業博物館を核とした近代化産業遺産の保存と活用を行ってきた.倉敷地域においては,創業家の経営理念と資産管理方針に基づき近代化産業遺産の保存と観光資源としての活用が積極的になされたのに対し,市民や行政の近代化産業遺産への関与は少なかったと判断される.これに対し日立地域においては,1990年代以降の中核企業のリストラクチャリングと,全国的な近代化産業遺産への新たな価値づけを背景に,企業のみならず市民や自治体による保存と活用の動きが活発化してきている.このように,近代化産業遺産の保存と活用には,中核企業の企業文化のみならず,地域産業構造の変動や地域における主体間関係の変化が関わっているのである.

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