中国福建省内陸農村における野菜生産の拡大と農家の就業構造

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タイトル別名
  • Development of Vegetable Production and Employment Structure in Inland Rural Areas of Fujian Province, China
  • チュウゴク フッケンショウ ナイリク ノウソン ニ オケル ヤサイ セイサン ノ カクダイ ト ノウカ ノ シュウギョウ コウゾウ

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抄録

中国の農村地域では,農業の低生産性,農村の荒廃,農民の貧困という「三農問題」が顕在化している.この問題の解決にあたって,近年における商業的農業の進展がどのように農村の就業問題の改善に寄与したのかを検討することは重要である.そのため,本稿は2000年以降に野菜生産が急激に拡大してきた福建省の内陸農村を取り上げ,大都市から離れた遠隔地における野菜生産の拡大とその要因,ならびにそれが農家の就業構造に及ぼした影響を明らかにした.福建省の野菜生産は1980年代から継続的に拡大してきた.それに伴って,福建省の野菜産地は従来の沿岸地域から内陸地域へと広がっていく.富頭村は福建省の内陸地域に位置し,近年,産地市場の設立や建甌市の中心部に隣接していることなどにより野菜生産の拡大が実現した.野菜生産の拡大は,内陸農村の就業構造に大きな影響を与えた.富頭村では,農外労働市場の展開が限られているため,農家の多くが野菜経営を開始している.その中で,多くの労働力を農業に投入している上層農家では,多様な野菜栽培を通じて高い収入を得ており,零細な農家では,一部の労働力を農外就業に投入し,野菜生産も少数品目に特化する傾向がある.野菜生産の拡大は,女性を中心に合作社での野菜包装作業や野菜作・稲作などの農業日雇という新たな就業機会を提供したが,産地仲買人や売店経営などに従事したのは主に零細農家の男性であった.一方,20歳代と30歳代の若年層は野菜生産の拡大にも関わらず,依然として省内外の都市部で就業している.しかしながら,一部の30歳代と40歳代の男性を中心に,都市部での就業をやめて村に帰還し,野菜栽培に従事する傾向がみられるようになった.このように,福建省の内陸農村における野菜生産の拡大は女性就業機会の増加,農業の生産性の向上などに貢献し,「三農問題」の緩和に寄与している.また,近年の壮年層の帰村就農は中国農業の持続的な発展にとって重要となっている.

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