スペイン縁辺地域における移牧活動と家畜管理

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タイトル別名
  • Livestock Management by Transhumance Activity in a Peripheral Area of Spain
  • スペイン エンペン チイキ ニ オケル イボクカツドウ ト カチク カンリ

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抄録

<p>スペイン縁辺地域に位置するアルバラシン山地において,家畜飼養は牧夫の生業戦略にとってもっとも重要な仕事であり,村落の住民にとって長らく重要な商いであり続けてきた。それはアルバラシン山地のような山間地域において食の安全を提供している。しかしながら,家畜用の飼料の生育は環境に大きく影響を受ける。そのため,牧夫は飼料を求めて季節ごとに夏季放牧地と冬季放牧地にヒツジと共に移牧を行なう。時空間の差異を利用する移牧活動による自然環境への適応は生業戦略にとって重要な機能である。生業戦略が家畜の再生産の最大化を目的とするとき,その繁殖管理は牧夫にとってもっとも重要な仕事となる。そこで,本稿では牧夫への聞き取り調査により,移牧活動における繁殖作業を含む家畜管理の技術を報告する。ヒツジは季節繁殖の家畜であり,交配や分娩といった作業が一定の時期に集中する。そのため,牧夫はそのような一連の作業を中心とする1年のサイクルを採用している。牧夫はその生殖から仔の肥育,嚙草に至るまで管理し,介入を通して生活資源としての羊肉を搾取する。そこには人と家畜の相互依存関係が根底にあり,この縁辺地域における自然環境と生態系を利用した牧夫の家畜管理の技術によって生業が成り立っている。</p>

収録刊行物

  • 人文地理

    人文地理 68 (4), 463-478, 2016

    一般社団法人 人文地理学会

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