ポリビニルアルコール濃厚水溶液の非ニュートン粘性

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タイトル別名
  • Non-Newtonian Behavior of Concentrated Solutions of Polyvinyl Alcohol
  • ポリビニルアルコール ノウコウ スイヨウエキ ノ ヒニュートン ネンセイ

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抄録

重合度1140~3090の5種のポリビニルアルコール(PVA)の水溶液の粘度を濃度8~20wt%,温度30°,40°,50℃において回転粘度計により測定した。みかけの粘度ηaのずり応力σ による変化はσ の非常に小さい範囲をのぞき<BR>1/ηa=(1/ηo)expkσ<BR>であらわされる.速度勾配0に外挿した粘度ηo,および非ニュートン特性の尺度と考えられるたにつき,それらの濃度,温度,重合度依存性を検討した。ηoについては,本実験範囲の大部分で分子量の3.4乗に比例し,1nηoが濃度に比例する。また,活性化エネルギーは温度に無関係で濃度に比例する。高分子濃厚溶液の粘度には分子間のentanglement(あるいは網状構造)が大きな役割を果し,entanglement発生の最初の段階では単位体積中のその数は濃度,重合度とともにいちじるしく増大するが,ある(重合度に対する)濃度以上では濃度の2乗および重合度に比例することがBuecheの理論およびそれを濃厚溶液に拡張した前報のとりあつかいから期待される。ηo についてのさきの単純な関係は本測定範囲の大部分が後者の段階に入り,いわゆる3.4乗則の成立する範囲で流動機構が一定しているためと考えられる。これに対応して,非ニュートン特性の尺度であるkは系の剛性率(したがってentanglementの数)に逆比例することが導かれ,事実,濃度の2乗および重合度に大体逆比例する。しかし,ln(ηa/ηo)と速度勾配Dとをプロットした曲線にDewittらにならった濃度の2乗,重合度および温度についてのreductionを行なうと,前述のある濃度,重合度の上下での相違が明らかにあらわれる。さらに二,三の例について動的粘弾性のとりあつかいにならって一応緩和時間スペクトラムを書き,小野木らの動的測定による結果とよく似た結果を得た。また,老化によるηoおよびkの変化を追求し,老化現象が一種のentanglementの発生として説明できることを示した。

収録刊行物

  • 日本化學雜誌

    日本化學雜誌 80 (3), 243-250, 1959

    The Chemical Society of Japan

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