有機リン酸エステルの加水分解反応と隣接基関与

書誌事項

タイトル別名
  • Hydrolysis of Organic Phosphates and Pa rticipation of Neighboring Groups in the Reaction Process

説明

mカルボキシフェニルリン酸(サリチル酸のリン酸エステル)の加水分解反応において,ジアニナン種の反応活性はかなり大きいのであるが,これはリン酸基に隣接したカルボキシル基が関与する分子内プロトン転移機構によるものであることが明らかとなった。そこで隣接基関与の過程を明らかにするために,隣接基としてさらにカルボキシル基,メトキシカルボニル基などをもつo-カルボキシフェニルリン酸誘導体の加水分解を検討し,上記の機構の妥当性を確かめた。つぎに複索芳香環をもつリン酸エステルとして3-ピリジルリン酸,ピリジルメチルリン酸および8-キノリルリン酸の加水分解反応について検討し,ピリジルメチルリン酸についての考察から,複素芳香環中の窒素原子がリン酸基に隣接する場合にも隣接基関与の過程をとり,o-カルボキシフェニルリン酸の場合のように分子内プ律トン転移機構にしたがうことを明らかにした。ついで,これらリン酸エステルの加水分解反応における金属イナンの触媒効果についての検討を行なったが,2価金属イオンのうち銅イオンは特異的な触媒作用を示すことがわかった。 このような触媒効果が認められる場合には,遷移状態において隣接基とエステル酸素を含む金属錯体が生成する反応過程をとるものと考えられる。3価以上の金属イオンのうちバナジルイオンは加水分解を促進させるが,一方,鉄イオンはo-カルボキシフェニルリン酸の加水分解を促進させるにもかかわらず,フェニルリン酸や複素芳香環を含むリン酸エステルでは反応はむしろ抑制された。したがって,鉄イオンは環状窒素原子に親和性をもたず,銅イオンの場合とは異なった作用機構をとるものと考えられる。

収録刊行物

  • 日本化學雜誌

    日本化學雜誌 91 (3), 185-205, 1970

    The Chemical Society of Japan

被引用文献 (2)*注記

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