加糖煉乳中の乳糖、蔗糖及び轉化糖を定量する方法

書誌事項

タイトル別名
  • Quantitative Determination of Suerose, Lactose and Invert Sugar in the Sweetened Condensed Milk

説明

1) 煉乳中の糖定量に關する在來法を二つに分類し其の要旨を概述することによつて在來法の何れを適用しても煉乳中の糖類を滿足に定量し得ないことを明らかにした。<br>2) 煉乳製造に際して現在用ゐられて居る砂糖は蔗糖の外に微量ではあるが、ほぼ一定の水分と轉化糖とを含んで居ることを明らかにした。從つて煉乳中の糖類を定量するに當つて從來の如く轉化糖を看過して蔗糖及び乳糖のみを定量する時には其の結果が受くる誤差は甚だ大となるわけである。<br>3) 是に於て煉乳中の蔗糖、轉化糖及び乳糖を在來法に比してより合理的に而も單簡に定量する方法を案出するために基礎實驗に於ては蔗糖を完全に轉化する爲めの最適條件を見出し同時に此の條件を適用した時、蔗糖と共存する所の乳糖が蒙むる變化をも明白にした。<br>4) 豫備實驗に於ては既知量の砂糖(蔗糖と微量の轉化糖を含む)と乳糖の混合液から蔗糖、乳糖及び轉化糖の定量を試み前の原理を加糖山羊乳中の糖類定量に適用して加糖乳中の蔗糖、乳糖及び轉化糖の定量値と實在値との關係を明白にして加糖煉乳中の糖類定量法の要旨を定めた。<br>5) 以上の要旨を既知量の砂糖を含む煉乳中の糖類定量に適用した結果次の如き定量方法を案出し更に實驗例を示して新方法による時は實在量に極めて近似な糖量を定め得ることを證した。<br>6) 新方法の要領。<br>i) 煉乳15gを秤量し温水、約33ccを加へて均一液とならしめたる後之にFehling's CuSO4-solution* 15ccと0.5N NaOH 9ccとを加へて蛋白及び脂肪を沈澱せしむ。<br>ii) 上記の上澄液を濾過し沈澱を傾斜法によつて數囘水洗し濾液及び洗液を合して500ccとなす。<br>iii) 500ccのうちから47.5ccをとり之に1N HCl 2.5ccを加へて50ccとなしそのうちから5ccをとつて74°Cの温水中にて70分間加温して蔗糖を轉化せしめたる後Bertrand氏法によつて還元される銅量を定む。之をA mgとなす。<br>iv) 500ccのうちから別に47.5ccをとり之に水2.5ccを加へて50ccとなしそのうちから10ccをとつてBertrand氏法に從つて還元されて銅量を定む。之をB mgとす。<br>v) 然る時は次式によつてCを算出すれば供試糖液(47.5ccに水又はHCl 25ccを加へて50ccとなしたるもの。以下同じ)5cc中の蔗糖が轉化した時の還元銅量となる。<br>A-B/2(1+2.72/100)=C<br>但し2.72/100は供試糖液内の乳糖が所定のHCl中にて加温せられる時の還元力増加率である。此の銅量からBertrand氏表によつて轉化糖量を求め之に0.95を乘ぜば蔗糖量となる。之を“s” mgとなす。<br>vi) 次式によつて“i”を算出すれば供試糖液10cc中の轉化糖量を見出し得。<br>“s”×2.9/100×2=“i”<br>但し2.9は添加砂糖中の蔗糖100に對して隨件する轉化糖の平均値である。<br>vii) “i” mgの轉化糖量に相當する銅量を次表〓によつて求めその値をBから差引けば供試糖液10cc中の乳糖に原因する還元銅量を見出し得る。引き續き此の銅量からBertrand氏表によつて乳糖量を算出する。之を“l” mg.とする。<br>viii) 以上の“s” “i” “l” (單位は夫々mg)に次の係數を乘ぜば供試煉乳100g中の糖量(單位g)となる。<br>蔗糖量(g)=s×0.7227<br>轉化糖量(g)=i×0.4053<br>乳糖量(g)=l×0.3447<br>終りに臨み有用なる實驗資料を特に調製して分讓せられたる極東煉乳株式會社取締役花島周一氏に對して厚く謝意を表し併せて香阪氏が實驗に助力せしことを附記す。

収録刊行物

  • 日本化學會誌

    日本化學會誌 53 (12), 1150-1162, 1932

    The Chemical Society of Japan

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