種々のイオン化法を用いたFT-ICR MSによる重質油のキャラクタリゼーション

  • 宮林 恵子
    北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科
  • 内藤 康秀
    北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科
  • 三宅 幹夫
    北陸先端科学技術大学院大学マテリアルサイエンス研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Characterization of Heavy Oil by FT-ICR MS Coupled with Various Ionization Techniques

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説明

超高分解能での測定が可能であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析法(FT-ICR MS)を用いた重質油成分分析法について概説した。FT-ICR MSでは得られる質量スペクトルの質量確度の高さゆえ,精密質量値から簡便に分子式を算定することが可能である。本稿では,常圧残油(AR),減圧軽油(VGO),減圧残油(VR)などの重質油および触媒処理油について,FT-ICR MSと様々なイオン化法との組合せから得られる成分を解析し,それらの特徴について示した。AR,VGO,VRを電子イオン化(EI)で測定した結果,試料中の主成分である炭化水素や硫黄化合物が観測され,炭化水素化合物では蒸留分に応じた炭素数や芳香環数の成分分布を得た。温和なイオン化法であるエレクトロスプレーイオン化(ESI)を用いた場合,石油中の微量成分である極性成分が選択的に検出され,採取地の異なる5種の減圧残油の分析では,採取地に依存した減圧残油窒素化合物成分の組成分布を観測できることを明らかとした。また,処理温度の異なる触媒処理油のESI FT-ICR MS測定から処理温度の向上に従い,特定の不飽和度(Z=-25)の成分([CnH2n-25N+H])が選択的に残留することを明らかにし,本手法が触媒耐性成分の解明に有用であることを示した。さらに,フラグメントを排した炭化水素化合物の検出法として,ESIにおける溶液の酸性度を制御することで,炭化水素成分が検出できることを示した。液体二次イオン化法では,炭化水素・硫黄化合物・窒素化合物が観測され,質量スペクトルから得られる硫黄の成分量は元素分析値に近い値を示し,定量性の可能性を検討した。FT-ICR MSを用いることで,従来困難であった個々の重質油成分分析の可能性を示すとともに,イオン化法の特長を生かすことで目的とする成分の選択的な分析が可能であることを示した。

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参考文献 (106)*注記

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