新生児遷延性肺高血圧症の病態を呈した重篤な動脈管早期収縮の1例

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  • Premature constriction of the ductus arteriosus that presented persistent pulmonary hypertension of the newborn: case report

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抄録

動脈管早期収縮(premature constriction of ductus arteriosus: PCDA)は,早期に胎児診断し適切に対処されれば比較的予後が良い疾患である.しかし,完全閉鎖例で対応の時期を誤ると胎児の肺血流が増加し,肺動脈平滑筋層を肥厚させるようになり,胎児右心不全や胎児水腫,新生児遷延性肺高血圧症(persistent pulmonary hypertension of the newborn: PPHN)などを合併して死に至ることもある.今回我々は,胎児診断により救命し得たPPHN合併の重篤で非典型的なPCDAを経験したのでここに報告する.症例は27歳の1回経妊1回経産婦で,過去の妊娠分娩歴に特に異常はなく,在胎36週からnon-stress test(NST)で軽度変動一過性徐脈を認めていた.胎児心エコー検査では,three vessel view(3VV)~three vessel trachea view(3VTV)にかけて,大動脈に比較して拡大した動脈管を認めたが,動脈管内の血流は描出できず在胎38週4日に高次医療施設に転院となった.本症例では,通常のPCDAと同様に右室内腔は拡大,右室駆出率の低下(24%),右室面積変化率は低下(3.6%)し,Tei indexは1.16と高値を示したが,逆に右室壁の菲薄化と低い右室圧が特徴でPCDAとしては非典型的であった.動脈管が完全閉鎖していなかった本症例においてこのような状態になったことは,いわゆる右室の「後負荷不適合」だけでは説明できず右室への冠潅流障害などの可能性などを考慮する必要があるが,直接説明できるだけの所見はみられず不明な点が多い.ただ,逆にPCDAとして非典型的な右室心筋の菲薄化,低い右室圧という所見は,PCDA症例における重症化の指標となり得るかもしれないと思われた.

収録刊行物

  • 超音波医学

    超音波医学 42 (6), 725-730, 2015

    公益社団法人 日本超音波医学会

参考文献 (16)*注記

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