弁逆流定量評価の基本

書誌事項

タイトル別名
  • Principles of Quantification of Valvular Regurgitation

説明

逆流の定量化は病態の評価と手術適応には不可欠である. 理想的指標は, 1) 簡便である, 2) 信頼性がある, 3) 再現性がよい, ことが条件である. 現在, 定量化にゴールドスタンダードはない. 数値で表しても結局は左室造影との対比である半定量のことが多く, 軽症, 中等度, 重症という三段階分類で表現されているのが現状である. 臨床的に利用すべき時は軽症と中等度逆流との識別, 臨床像と所見が一致しない時, および手術適応の決定である. 以下の指標にはそれぞれ, 利点と限界があり, 全ての指標が一致するわけではない. 十分にわきまえて取捨選択しなければならないことがある. 多断面アプローチから逆流シグナルの到達度を3-4段階で判定量する方法は簡便なためによく利用されている. 僧帽弁や三尖弁では逆流シグナル最大面積をトレースしてその絶対値あるいは心房面積との比で表す方法, 弁下部でvena contracta (縮流帯) と呼ばれる最も細くなる部位を測定する指標もある. ARの定量化にはさらに, 逆流ジェットの幅か断面積を流出路の径や断面積との比で表す指標, 逆流シグナルの傾きを圧半減時間 (pressure half time : PHT) かdecay slopeで求める方法がある. 僧帽弁口と大動脈弁口を流れる血液はそれぞれの流速プロフィールをトレースして求める時間速度積分値 (TVI) と該当する弁輪径からの計算される面積との積で決定される. その差が逆流量で弁口部血流との比が逆流率となる. この方法論は逆流ジェットの方向や大きさには依存しないというメリットがある. 弁口部上流で半球を形成するflow convergenceの半径から逆流量や逆流弁口面積を求める方法PISA (proximal isovelocity surface area) も中等度以上のMRでは利用する価値のある指標である. しかし, 以上の指標は日米の手術適応のガイドラインでは記載されていない. 利用されるのは主に左室径, 駆出分画, および肺高血圧の有無である. 逆流量, 逆流率, 逆流弁口面積, などを絶対値として捉えるには慎重を要する.

収録刊行物

  • 超音波医学

    超音波医学 33 (6), 621-630, 2006

    公益社団法人 日本超音波医学会

参考文献 (10)*注記

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