神経心理学領域における意味記憶研究の動向

  • 村井 俊哉
    京都大学大学院医学研究科 脳統御医科学系専攻脳病態生理学講座 (精神医学)

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タイトル別名
  • A review on recent neuropsychological studies of semantic memory

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意味記憶はエピソード記憶と対比するかたちで認知心理学領域に導入された長期記憶の下位分類である。1970年代以降の神経心理学領域での意味記憶研究は,A.意味記憶システムと他の認知機能 (とくにエピソード記憶) を支えるシステムとの関係,B.意味記憶システムそれ自体の構造,の2点に大別できる。Aについては,意味健忘,意味痴呆の名称のもとに選択的意味記憶障害の症例が相次いで報告され,意味記憶システムはその他の認知機能を支えるシステムとある程度独立しているということが確認されてきた。最近は encodingの段階での両記憶の関連が関心を呼んでいるが,発達性健忘と呼ばれる一連の症例が注目されている。Bについてとくに関心をもたれてきたのが,生物と非生物の意味記憶とのあいだで成績に乖離がみられる一連の症例である。いくつかの興味深い説明仮説が提唱されているが,いずれが正しいかについて,いまだ決着はついていない。

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参考文献 (30)*注記

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