非失語性失書を合併したタイピング障害の一例

  • 坂井 麻里子
    恩賜財団大阪府済生会茨木病院 リハビリテーション科 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科
  • 柏木 敏宏
    宏潤会大同病院 神経内科
  • 江口 香織
    宏潤会大同病院 神経内科
  • 西川 隆
    大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Typing Impairment with Non-aphasic Agraphia:
  • Impaired Kinesthetic Image in Typing and Writing
  • ―失書との関連―

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説明

非失語性の失書を伴うタイピングの障害を呈した症例を報告した。症例は 69 歳,右手利き男性, 脳梗塞により発症した。病前はパソコン操作に習熟し, ブラインドタッチが可能であり打鍵速度は書字より格段に速かったが, 発症後, 失書とともにタイピングの障害を認めタイピング速度も低下した。失語, 失読, 失行や構成障害は認めなかった。失書では音韻選択・配列の問題はなく, 「文字運動覚心像」の表出面の障害,すなわち「運動覚性失書」と考えられた。タイピングの誤りにも音韻選択・配列の問題はなく, ほとんどが打鍵位置の空間的誤りであり, 「タイピング運動覚」の障害に基づくものと考えられた。 本例の病巣は左中心前回,角回皮質から皮質下, 上・下頭頂小葉であり, 書字における音韻選択や配列に関わるとされる左中前頭回後方部に病変は認めなかった。タイピングは書字の過程と神経基盤の一部を共有しており, 本例では書字運動に関わる部位が損傷されたことにより, タイピングにも書字と類似した誤りが出現したと推測される。

収録刊行物

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (14)*注記

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