琵琶湖南湖における固有種ネジレモの遺伝的変異と遺伝子流動

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  • Genetic variation and gene flow in Vallisneria asiatica var. biwaensis (Hydrocharitaceae), an endemic submerged macrophyte, in South basin of Lake Biwa
  • ビワコ ナンコ ニ オケル コユウシュ ネジレモ ノ イデンテキ ヘンイ ト イデンシ リュウドウ

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抄録

琵琶湖南部の副湖盆として成立する南湖では沈水植物群落の面積・現存量が1930年代以降、人為的な影響を受け大きく変動している。群落の変動は群落構成種の遺伝構造に影響を及ぼしていると考えられるが、その影響はほとんど研究されていない。ネジレモ(トチカガミ科セキショウモ属)は琵琶湖・淀川水系に固有な沈水植物であるが、1970年代以降分布を減少させ続けている。本研究では南湖におけるネジレモ集団の遺伝構造の現状把握と分布減少の影響評価を主な目的として、南湖を中心とした集団を対象としてアロザイム酵素多型による遺伝解析を行った。全19集団447サンプルを10酵素14遺伝子座で解析したところ、南湖の集団は北湖集団と同程度の遺伝的変異量を保持していることが明らかになった。また、集団間の遺伝的分化の程度は低く、広く遺伝子流動が行われていることが示されたが、湖岸に沿った緩やかな遺伝的まとまりを形成していることも示唆された。本研究の結果からは南湖における沈水植物群落変遷とネジレモ集団の遺伝構造は明瞭に対応づけることはできなかったが、保全遺伝学的観点からは現状の遺伝的変異を保持するような管理が望まれる。本研究で得られた本種の遺伝的なまとまり、遺伝子流動の傾向に関する基礎的知見は、保全施策の立案に役立つことが期待される。

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