渡良瀬遊水地の湿地再生試験地における初期の植生発達

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  • Early vegetation growth in an experimental restoration site in the Watarase wetland
  • ワタラセ ユウスイチ ノ シッチ サイセイ シケンチ ニ オケル ショキ ノ ショクセイ ハッタツ

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抄録

表層土壌の除去は、良好な湿地植生が維持されていた時代に土壌中に蓄積したシードバンクを露出させるとともに、水条件を回復させることから、氾濫原湿地の再生手法として有効であると思われる。ヨシとオギの優占群落が植生の大部分を占める渡良瀬遊水地では、土砂堆積に伴う乾燥化が進み、植生の均一化およびセイタカアワダチソウなど侵略的外来種の侵入が加速しつつある。表層土壌除去は、セイタカアワダチソウの地下茎と土壌シードバンクを除去する効果も期待できる。本研究では、これら2つの効果および掘削する土壌深度の影響を検討した。5段階の掘削深度で造成された湿地再生試験地(2007年4月に完成)において、造成後2年間にわたってフロラおよび植生調査を行った。フロラ調査の結果では、在来水草種と撹乱依存植物の構成要素である在来1〜2年生湿生種が、それぞれ6種と31種確認され、在来1〜2年生湿生種は周辺植生(改変前のヨシ・オギ原)に比べて種数が有意に多かった。これらの種の中には、全国版あるいは地方版のレッドリスト掲載種も14種含まれ、掘削による表層土壌の除去は湿地植生の再生手法として有効であることが示唆された。セイタカアワダチソウを含む外来種が9種確認されたが、種数と現存個体数のいずれもが、造成後2年目に顕著に減少し、セイタカアワダチソウは植生にほとんど影響を及ぼさないまでに抑制された。掘削する土壌深度は、水草を除いて概ね深いほど種数が有意に減少したが、ミゾハコベやオオアブノメのようにより深い掘削深度のみで確認された種もあった。氾濫原湿地の植生の再生の観点からは、その場に応じた掘削深度の検討が必要なことが示唆された。

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