東京区部西縁3区におけるチョウ相の変化とその生態的要因

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タイトル別名
  • Temporal change in the butterfly fauna in three wards of western Tokyo, Japan, and relevant ecological factors
  • トウキョウクブ セイエン 3ク ニ オケル チョウソウ ノ ヘンカ ト ソノ セイタイテキ ヨウイン

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抄録

東京都世田谷区・杉並区・練馬区における高度成長期前後のチョウ相の変化とその要因を分析するために、市民科学者(愛好家)によるチョウの採集・目撃の記録を収集してデータベース化した。1923〜1960年(1950年代以前)および1982年〜2008年(1980年代以降)の2つの時期を比較したところ、1950年代以前には合計65種、1980年代以降には55種が記録されており、両方の年代に共通して記録された種は49種であった。1950年代以前に確認された種について、1980年代以降の生息状況(消失、残存)に及ぼす生態的特性の効果を単項ロジスティック回帰による一般化線形モデルを用いて分析したところ、化性(P<0.01)、利用できる食餌植物の種数(P<0.05)、食餌植物の栽培利用の有無(P<0.01)が有意な効果を示した。また、科をランダム効果とした一般化線形混合モデルのモデル選択により、化性と食餌植物の栽培利用の有無が種の生息状況に有意な効果をもたらしていることが示された。すなわち、年1化性の種および食餌植物の栽培利用のないチョウは、1980年代以降に多くが消失し、両方の生態的特性を持つ種で現在でも記録されているのはミドリヒョウモンのみであった。一方、1980年代以降に新たに記録された種は6種であった。このうち5種は近年の分布域の北上・拡大が観察されている種であった。その原因としては、ヒートアイランド化や食餌植物の植栽などによる人為的影響が推測される。これらの種の生態的特性はすべて年2化以上、4種で食餌植物の栽培利用があった。本研究により、市民科学者の記録をデータベース化して活用することは、チョウ相の変遷およびその要因の分析に有効であることが示された。

収録刊行物

  • 保全生態学研究

    保全生態学研究 15 (2), 241-254, 2010

    一般社団法人 日本生態学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (61)*注記

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