<i>Seila yokoyamai</i> Cossmann, 1923に換えて<i>Cerithiopsis trisulcatus</i> Yokoyama, 1922の復権(腹足綱:クリイロケシカニモリ科)

書誌事項

タイトル別名
  • Restoration of <i>Cerithiopsis trisulcata</i> Yokoyama, 1922 in Place of <i>Seila yokoyamai</i> Cossmann, 1923 (Gastropoda: Cerithiopsidae)
  • Restoration of Cerithiopsis trisulcata Yokoyama, 1922 in Place of Seila yokoyamai Cossmann, 1923 (Gastropoda: Cerithiopsidae)

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抄録

Seila yokoyamai Cossmann, 1923はCerithiopsis trisulcatus Yokoyama, 1922に対する置換名として提唱され,その後今日まで一貫してヨコヤマケシカニモリの有効な学名として使用されてきた。Cossmann (1923)は,置換名を与えた根拠として,「(属位変更の結果新たな組み合わせとなる)Seila trisulcataはパリ盆地産の同名の名義タクソンに先取される」と記しているが,関連する文献を精査した結果,この名前はDeshayesコレクションの中の標本ラベルに用いられただけで,印刷物では扱われていないことが判明した。従って,動物国際命名規約(ICZN)の条11.5(学名が提唱された時点で有効として使用されていること)に当てはまらない。すなわち,ICZN条59.3(1961年よりも前に置換されたがもはや同属だとは考えられていない二次同名)の要件を満たさないことから,Cerithiopsis trisulcatus Yokoyama, 1922の無効性が取り消される。さらに,置換名Seila yokoyamaiは現在ではより一般的に用いられているものの,ICZN条23.9(優先権の逆転)の前提条件「古参異名が1899年よりも後に有効名として使用されていなこと」を満たさないことから,優先権の逆転もあり得ない。従って,ヨコヤマケシカニモリの学名はCerithiopsis trisulcatus Yokoyama, 1922に変更されることになる。ヨコヤマケシカニモリは元々更新統瀬又層の化石種として提唱された名義タクソンであるが,その後関東各地の更新統のみならず,現生からも報告されている。現生では,太平洋では房総半島以南,日本海では佐渡以南,九州までの,水深150 m前後の潮下帯から知られている。属位について,Cossmann (1923)以来,今日までの主要な文献ではSeila A. Adams, 1861,あるいはその亜属とされるNotoseila Finlay, 1927に含められていたが,この度原殻や水管溝などの貝殻の形態を詳しく検討した結果,Cerithiella Verrill, 1882に所属を変更するのが適当であると判断した。

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