日本に侵入したコモチカワツボの生息環境

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  • Habitat Description of <i>Potamopyrgus antipodarum </i>(Caenogastropoda: Hydrobiidae) in Some Areas of Japan: How Far Will It Spread?
  • Habitat Description of Potamopyrgus antipodarum (Caenogastropoda: Hydrobiidae) in Some Areas of Japan : How Far Will It Spread?

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抄録

侵略的外来種であるコモチカワツボについて,栃木県那須塩原市塩原町(那珂川水系箒川),千葉県千葉市(稲毛海浜公園),神奈川県平塚市(馬入公園),神奈川県湯河原町(千歳川),滋賀県彦根市(八坂町)の5箇所で,その生息環境を測定し,貝の生息密度との関連性を調べた。調査は,2007年および2010年の8~9月に行った。その結果,コモチカワツボの密度は水深が浅い所で高い傾向にあり,また,さまざまな流速の流水中に生息がみられた。八坂町では,琵琶湖に流入する小水路に高密度での生息がみられたが,湖岸部には分布していなかった。塩原町と湯河原町では河川に温泉排水の流入が見られたが,すべての生息地で夏季平均水温は25℃(本種の生息可能水温の上限とされる)を越えなかった。従って,温泉排水による水温上昇は,むしろ秋~春の低水温期に本種の生息環境を改善していると考えられた。千葉市の水路では夏季の最高水温が33.3℃に達したが,高密度での生息が見られた。水質(DO,pH,EC,NH4-N,PO4-P,Ca2+)と密度の関連性には明らかな傾向は見いだせなかったが,DOとCa2+に関しては,既報の生息下限に近い値の地点にも高密度の生息が確認された。室内実験によって高水温耐性を調べた結果,滋賀県彦根市甘呂町産の個体は31℃の温度条件下で2週間以内に大部分が死滅したが,千葉市産の個体はすべて実験終了まで(3週間)生存した。甘呂町の個体の大多数は千葉市の個体と同一のハプロタイプであり,温度耐性の差は遺伝的差異によるものではなく,馴化によって生じた可能性が考えられた。以上の結果より,今後,コモチカワツボが温泉を有する北日本の水系,南日本,適切な温度・溶存酸素条件を具えた湖沼に分布を広げる可能性を指摘した。

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