空間構造を考慮した環境保全型農業の影響評価 : 佐渡島における両生類の事例

  • 宇留間 悠香
    東京大学大学院農学生命科学研究科
  • 小林 頼太
    新潟大学超域学術院
  • 西嶋 翔太
    東京大学大学院農学生命科学研究科:日本学術振興会
  • 宮下 直
    東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻生物多様性科学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Effectiveness of conservation-oriented agricultural practices on amphibians inhabiting Sado Island, Japan, with a consideration of spatial structure
  • クウカン コウゾウ オ コウリョ シタ カンキョウ ホゼンガタ ノウギョウ ノ エイキョウ ヒョウカ : サドガシマ ニ オケル リョウセイルイ ノ ジレイ

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抄録

近年、草地性や湿地性の生物の代替生息地である農地の生物多様性が著しく減少しており、農地生態系の再生を目的とした環境保全型農業が普及し始めている。本研究では、新潟県佐渡市で行われているトキの個体群の復元を目的とした環境保全型農業のうち、冬期湛水および「江」の設置が、繁殖のため水田を利用することのある両生類3種(ヤマアカガエル、クロサンショウウオ、ツチガエルの一種)の個体数や出現確率に与える影響を探った。佐渡市東部の20箇所の水田群(計159枚の水田)において各種両生類の個体数を調べ、一般化線形モデル(または一般化線形混合モデル)と赤池情報量基準(AIC)を用いて、水田と水田群の2階層における個体数を説明する統計モデルを探索した。その結果、ヤマアカガエルとツチガエルの一種において、冬期湛水もしくは江の設置が強い正の影響を与えることが明らかになった。ヤマアカガエルでは、水田と水田群レベルで異なる農法が正の効果を示した。これは、個体群レベルの応答を評価するためには適切な空間スケールを定める必要があることを示唆している。景観要因としては、ヤマアカガエルとクロサンショウウオで水田周辺に適度な森林率が必要であるが、その空間スケールは大きく異なること、またツチガエルの一種では景観の影響を受けないことが明らかになった。この結果は、日本の里山のように景観の異質性が高い環境では、環境保全型農業の影響評価の際に、一律の指標種を用いるのではなく、局所的な生息地ポテンシャルにもとづいて評価対象種を選定する必要があることを示唆している。

収録刊行物

  • 保全生態学研究

    保全生態学研究 17 (2), 155-164, 2012

    一般社団法人 日本生態学会

参考文献 (19)*注記

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