鳥取県における特定希少野生動物カラスガイCristaria plicata 個体群の現状 : 幼生と宿主魚類の関係に着目して

書誌事項

タイトル別名
  • The present state of endangered freshwater mussel (Cristaria plicata) populations in Tottori Prefecture, with special attention to the relationship between the larvae and host fishes
  • トットリケン ニ オケル トクテイ キショウ ヤセイ ドウブツ カラスガイ Cristaria plicata コタイグン ノ ゲンジョウ : ヨウセイ ト シュクシュギョルイ ノ カンケイ ニ チャクモク シテ

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抄録

鳥取県ではカラスガイの絶滅が危惧されているが、本種の個体群構造や繁殖の実態が明らかにされていない。そこで本研究では、本種の分布が確認されている3つの水域を対象に、サイズ組成、母貝の妊卵状況、本種の生息域における魚類相、およびグロキディウム幼生の宿主適合性を明らかにするための野外調査と室内実験を行った。多鯰ヶ池ではカラスガイのサイズ組成が大型個体に偏っていたことから、稚貝の加入が近年行われていないことが示唆された。しかし、母貝が幼生を保有していたこと、当池でブルーギルとオオクチバスが優占していたことから、これらの外来魚による幼生の宿主魚類の駆逐が本種の新規加入の阻害要因になっていることが併せて示唆された。一方で、他の2つのため池では大型個体に加えて若齢の小型個体も少数ながら発見された。これらの池ではブルーギルとオオクチバスが確認されない反面、室内実験より幼生の宿主と判定されたフナ属魚類が優占することが明らかになったことから、新規加入が生じる条件が揃っていることが示唆された。以上の結果より、現在の鳥取県ではカラスガイの個体群動態が魚類群集に強く依存していること、そしてブルーギルとオオクチバスが優占する多鯰ヶ池は本種個体群の存続が危ういことが示唆された。以上の結果を踏まえ、最後に当県におけるカラスガイ保全のための提言を行った。

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