水田と河川、コウノトリ野生復帰地での餌場の相対的価値 : 豊岡盆地に生息するサギ類を指標として

  • 中島 拓
    総合科学株式会社陸域環境部
  • 江崎 保男
    兵庫県立大学自然・環境科学研究所:兵庫県立人と自然の博物館:京都大学生態学研究センター
  • 中上 喜史
    株式会社ニュージェック
  • 大迫 義人
    兵庫県立大学自然・環境科学研究所:兵庫県立コウノトリの郷公園

書誌事項

タイトル別名
  • Relative value of a paddy field and river as foraging habitats at a reintroduction site of the oriental white stork
  • スイデン ト カセン コウノトリ ヤセイ フッキチ デノ エサバ ノ ソウタイテキ カチ トヨオカ ボンチ ニ セイソクスル サギルイ オ シヒョウ ト シテ

この論文をさがす

抄録

コウノトリ野生復帰地における餌場の現状を明らかにするため、兵庫県豊岡盆地においてサギ類を用いた河川と水田利用の季節的な変動を研究した。調査地のサギ類は、繁殖のために当地に集まって来ており、その個体数変動は水田での個体数変動に起因していた。一年のうちもっとも多くの餌を必要とする繁殖期において、水田の個体数は河川の3倍に達し、サギ類は水田の餌生物に依存して子育てしていることが明らかになった。しかし、農閑期には水田の個体数は激減し、特に田面における採餌はほとんど見られなくなった。この事実は、農閑期の水田が餌場としての価値を著しく低下させることを示唆しており、この価値の低下は田面の乾田化に伴うものと考えられた。一方、河川は一年中安定した餌場を供給していた。しかし、水田が餌場としての価値を低下させる農閑期であっても河川の個体数が増加しないことから、河川が収容できる採餌個体は一年中飽和状態にあると考えられた。コウノトリの野生復帰を成功させるためには、一年中安定した水田の生物生産力を回復させることが必要である。

収録刊行物

参考文献 (24)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ