新生児一過性多呼吸の発症因子の検討と早期診断への試み

書誌事項

タイトル別名
  • Investigation of risk factors of transient tachypnea of the newborn in our hospital and trial for early diagnosis
  • シンセイジ イッカセイ タコキュウ ノ ハッショウ インシ ノ ケントウ ト ソウキ シンダン エ ノ ココロミ

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説明

背景: 新生児一過性多呼吸 (transient tachypnea of the newborn; TTN) は, 新生児におけるもっとも一般的な呼吸障害の一つであり, その発症因子として, 帝王切開分娩, 男児, 早産などが挙げられている. 今回, 当院の出生児を対象に, TTNの早期診断への試みとして, その発症因子の検討を行った.<br>方法: 2012年4月から 2013年3月までの間に, 当院にて出生した444人のカルテレビューを行った. そのうちTTNと診断された群は34人,多呼吸(60/分以上)や呻吟を呈したがルーチンケアのみで12時間以内に改善したnon TTN群は87人, 出生時, 呼吸を含め異常を認めなかった対照群は265人, 感染症など他疾患を有していた他疾患群は58人であった. 他疾患群を除外した386人を対象とし, 性別, 在胎日数, 出生体重, 分娩様式, Apgar score値などについて 3群間で比較検討を行った.<br>結果: TTN群の割合は全出生例中7.7%で当院新生児の疾患の中で最多であった. 3群間の比較では, 性差や母親の年齢に有意差はみられなかったが, 在胎日数の平均値はTTN群が269.6日, non TTN群は 274.3日, 対照群は 274.1日であり, TTN群が有意に少なかった. 出生体重はTTN群 2,795.7 g, non TTN群 2,951.5 g, 対照群2,989.8 g であり, 対照群に比し TTN群で有意に少なかった. 帝王切開の割合は, TTN群で 24%, non TTN群で14%, 対照群で10%であり, 対照群に比しTTN群で有意に多かった. 前期破水の割合は, TTN群が 21%, non TTN群 31%, 対照群14%であり, 対照群に比し non TTN群で有意に多かった. 胎児ジストレスの割合には有意差はなかった. Apgar score 1分値の中央値は TTN群が 8点, non TTN群と対照群は 9点であったが, 統計学的には 3群間に有意差が見られ, TTN群, non TTN群, 対照群の順に低かった. 5分値の中央値は TTN群 9点であり, non TTN群と対照群の 10点に比し有意に低かった.<br> 在胎週数が38週以下 (在胎日数が272日以下) であり, かつ Apgar scoreが1分8点以下, かつ 5分9点以下であった場合のTTN発症は17人中10人 (59%),上記条件を満たさなかった369人中ではTTNの発症は24人 (7%)であり, 有意差がみられた.<br>結論: 本研究では TTNの発症に, 出生体重, 在胎週数, 帝王切開分娩, Apgar score 1分値, 5分値が低値であることが関連していることが明らかとなった. また在胎週数が 38週以下, かつApgar score が1分値8点以下, かつ5分値が 9点以下である場合には, TTN発症が有意に多いことが示された.

収録刊行物

  • Tenri Medical Bulletin

    Tenri Medical Bulletin 17 (2), 67-71, 2014

    公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所

参考文献 (7)*注記

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