森林性Emberizaクロジの繁殖生態,なわばりへの帰還と行動圏の著しい重複

  • 江崎 保男
    兵庫県立大学自然・環境科学研究所/兵庫県立人と自然の博物館 京都大学生態学研究センター 協力研究員
  • 堀田 昌伸
    長野県環境保全研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Breeding Ecology of Forest Dwelling Grey Buntings Emberiza variabilis: Territorial Fidelity and Intense Home Range Overlap
  • シンリンセイ Emberiza クロジ ノ ハンショク セイタイ ナワバリ エノ キカン ト コウドウケン ノ イチジルシイ チョウフク

この論文をさがす

抄録

1996年~1999年の繁殖期に長野県北東部のブナ林において,個体識別した森林性ホオジロ類であるクロジ個体群の繁殖生態,特になわばりと行動圏について調査した。成鳥雄は若鳥雄よりも有意に早く渡来し,雌は最初の雄よりも6~10日遅れて渡来した。1999年には12羽の雄が出現し10羽が定着した。これら定着個体はすべて雌を獲得し繁殖した。雄間の闘争行動は5月初めから5月15日まで高い頻度で観察されたが,その後急激に減少した。1999年のソングエリアは雄間の闘争が激しかった5月15日以前には,一部の隣接雄間でかなり重複していたが,5月16日以降ほぼ完全に分離し,調査地全域に隙間なく分布していた。1999年に定着した雄10羽のうち6羽は1998年以前より調査地内のほぼ同じ場所で定着・繁殖していた個体であり,クロジの雄がなわばりへの強い帰還性をもつことが明らかになった。ソングエリアとは異なり,かれらの行動圏は繁殖期をとおして大きく重複していた。1999年に調査地内で23個の巣を発見した。雄を特定できた17巣のすべてで,雄親は繁殖地内に定着した10雄のいずれかであった。つがい数より多い巣が発見されたが,雄が特定された17巣のうち16巣では雌親も特定された。雄のなわばり内に複数の巣が発見された場合には,いずれも最初の営巣に失敗した同一つがいが再営巣した結果であった。また,雄親が特定できなかった6巣についても,上記のつがいの再営巣あるいは,調査地に隣接するペアのものと考えて矛盾がなかった。このことから,クロジが社会的な一夫一妻であることが示唆された。

収録刊行物

  • 山階鳥類学雑誌

    山階鳥類学雑誌 38 (2), 67-79, 2007

    公益財団法人 山階鳥類研究所

参考文献 (9)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ