個体識別したアオサギの繁殖コロニーへの執着性と長期的な繁殖履歴

  • 白井 剛
    首都大学東京理工学研究科生命科学専攻

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タイトル別名
  • Breeding Colony Fidelity and Long-term Reproductive History of Individually Marked Wild Grey Herons

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抄録

アオサギArdea cinereaの繁殖地への執着性と個体の長期的繁殖履歴を明らかにするために,東京近郊の繁殖コロニーにおいて,幼鳥50個体と成鳥19個体に色足環を装着し,9年間にわたる追跡調査を行なった。幼鳥50個体のうち,38個体 (76.0%)については,その後出生コロニーでは観察されなかった。出生コロニーに戻ってきた12個体のうち,4個体 (33.3%) は2歳から,2個体 (16.7%) は3歳から,1個体 (8.3%) は4歳から繁殖を開始したが,残り5個体 (41.7%)はそこに滞在するものの繁殖は認められなかった。これら12個体のうち,2個体は9年後も生存していた。一方,成鳥19個体のうち18個体 (94.7%)は,翌年以降も再確認された。アオサギは,このように,同じ繁殖コロニーを毎年利用する傾向があった。毎年繁殖した場合,コロニー内の同じ場所に営巣することもあれば,違う場所に営巣することもあった。繁殖は,通常1年1回であったが,ときに (9%の巣で)2回続けて行なわれた。観察を行なった9年間では,22個体の雛を巣立たせたオスが最大の繁殖成功を示した。雌雄とも個体識別された4つがいの繁殖履歴を見ると,例外はあるが,どちらかがいなくなるまでつがい相手をかえない傾向があった。毎年,非繁殖期 (秋から冬)になると,繁殖コロニーでは見られなくなる個体が多い。そうした個体は,繁殖コロニーから離れた川沿いで目撃され,個体ごとに目撃場所が決まっていることが多かった。つまり,繁殖コロニーと非繁殖期の採餌場の移動を毎年繰り返している可能性がある。サギ類では,一般に巣立ち雛は長距離移動を行うことが知られている。今回のアオサギの追跡観察においても,幼鳥に足環を付けてから54日後に,出生コロニーから南西に1,580 km離れた久米島で確認された個体がいた。

収録刊行物

  • 山階鳥類学雑誌

    山階鳥類学雑誌 44 (2), 79-91, 2013

    公益財団法人 山階鳥類研究所

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (38)*注記

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