頭頚部領域の再生医療

  • 上田 実
    名古屋大学大学院医学研究科・頭頸部感覚器外科学講座 東京大学医科学研究所・幹細胞組織医工学

書誌事項

タイトル別名
  • TISSUE ENGINEERING IN HEAD AND NECK SURGERY

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抄録

組織工学は再建医学の中では比較的新しい分野である。このコンセプトによれば, 人体は幹細胞, 細胞の足場, サイトカインによって再生が可能だという。数ある臨床分野の中で頭頸部領域は再生医療の応用領域としてもっも有利な領域である。われわれは1985年以来数多くの人体組織の再生研究をおこなってきたが, 本講演では頭頸部再建手術に実用化できる皮膚, 神経そして骨の再生医療について紹介する。<br>最初のトピックスは皮膚である。われわれは二つのタイプの培養皮膚を開発した。ひとつは培養表皮, ひとつは培養皮膚である。培養皮膚は表皮層と真皮層をもっており, 真皮はコラーゲンと線維芽細胞よりなる。二番目の話題は神経の再生である。コラーゲンメッシュの管壁と極細のコラーゲン繊維よりなる神経再生チューブを開発した。われわれはこのチューブを頸部郭清手術時に切断された副神経の再生に応用し, 移植後1ヶ月には良好な肩関節の運動を回復した。最後に骨の再生について紹介した。われわれの開発した注入型培養骨は, 間葉系幹細胞と血小板濃厚液からなり理想的な細胞移植システムである。ゲル状なのでシリンジで注入可能で極めて低侵襲的に移植でき, 欠損部にもよく適合する。この注入型培養骨を用いればあらゆる骨欠損を自己の骨組織で再建することができる。<br>本講演では三つの再生組織について紹介した。われわれの実験的, 臨床的研究から組織工学材料は頭頸部領域の再建に極めて有用であることが示された。

収録刊行物

  • 頭頸部癌

    頭頸部癌 30 (3), 450-460, 2004

    日本頭頸部癌学会

参考文献 (22)*注記

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