脳の可塑性(基礎の立場から)
説明
脳の可塑性は、成長期にも成熟期にも観察される。成長期の可塑性は脳をその個体や環境に適応した機能にチューニングする役割を果たす。基本的なチューニングが達成された脳では記憶や学習の機能を果たすのに可塑性が発揮される。また身体や脳に損傷を追った場合には、失われた機能を代償するような可塑性が発揮される。この可塑性がリハビリテーションの生物学的基礎となっている。大脳皮質運動野の可塑性の研究がサルを実験動物として進められ、運動野の体部位局在マップが経験によって変化すること、さらに脳損傷後にリハビリテーションを施すと体部位局在マップが変化することがわかってきた。われわれはリハビリテーション後の機能代償とその脳内メカニズムを明らかにするため、一次運動野の局所破壊後の精密把握の回復を観察し、さらに神経回路の構造的変化を推測できる分子組織化学的探索を行った。指の領域の破壊直後からのリハビリテーションによる回復過程では、指の使い方の変化に伴った成績の一時的低下と再上昇が見られ、最終的には破壊前とほぼ同じ運動によって、精密把握ができるようになった。機能回復後に代表的な成長関連タンパクであるGAP-43のin situハイブリダイゼーションを行うと、一次運動野と運動前野では破壊と同側の発現が上昇していた。破壊と同側の一次運動野や運動前野に細胞体を持つニューロンを含む神経回路が、構造的な変化を起こしたことが示唆される。
収録刊行物
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- 認知神経科学
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認知神経科学 7 (3), 206-210, 2005
認知神経科学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205225042816
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- NII論文ID
- 130004388045
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- ISSN
- 1884510X
- 13444298
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可