婦人科入院患者におけるメンタルヘルス : HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)を用いた検討

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タイトル別名
  • Screening for psychological distress in gynecological inpatients using the Hospital Anxiety and Depression Scale

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説明

婦人科疾患による入院はメンタルヘルスに少なからず影響を与えると考えられているが,その実態はいまだ明らかではない.そこで不安と抑うつを評価するHADS (Hospital Anxiety and Depression Scale)を用いて婦人科入院患者におけるメンタルヘルスを検討した.対象は平成12年9月から12月に当院婦人科に入院した130名(平均年齢:43.8±12.1歳)で,このうち良性疾患に対する手術目的入院(B群)は62名,悪性疾患に対する手術目的入院(M群)は32名,化学療法目的入院(C群)は36名であった.これらに対し,入院後3日以内にHADS日本語版に無記名,自記式にて回答が得られたものを解析した.また,健常女性2,943名を対照群とした.婦人科入院患者全体では,HADSの総得点・不安度・抑うつ度のスコアは健常女性に比して各々有意(p<0.05)に高値であった.群別の検討では,M群は総得点・不安度・抑うつ度はいずれも対象群より有意に高値であった.またM群はB群に比し,総得点・抑うつ度は有意に高かったが,不安度では有意差を認めなかった.B群は不安度のみ対照群よりも有意に高値であった.C群の総得点・不安度・抑うつ度は対象群よりもいずれも有意に高値を示したが,B群やM群とは有意差を認めず,両群の中間のスコアを示していた.項目別の検討では,不安度に対する項目である「何かひどいことが,今にも起こりそうな恐ろしい感じがしますか」と「胃が気持ち悪くなるような一種恐ろしい感じがしますか」の2項目と抑うつ度に対する項目である「身体の動きが遅くなったように感じていますか」において,M群がB群に比して有意に高いスコアを示していた.以上の結果より,婦人科疾患による入院はメンタルヘルスに影響を及ぼすことが明らかとなった.また,婦人科入院時には,メンタルヘルスの状態の把握とともに,良性疾患では不安への対応が,また悪性疾患では不安とともに抑うつへの対応が重要であると考えられ,今後. HADSを用いて対応が必要な患者の選択ができる可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 女性心身医学

    女性心身医学 6 (2), 260-267, 2001

    一般社団法人 日本女性心身医学会

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