ベトナム社会主義共和国の有効で持続性のある医療分野の卒後研修制度確立のための要素

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  • Analysis of factors for establishment of effective continuous medical education system in Vietnam
  • ~ベトナム保健省政策文書、ベトナム最大級の医療施設の活動記録の分析~

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抄録

<p>目的</p><p>  ベトナムでは1990年後半ごろより、その医療提供体制に卒後継続教育の役割を持たせた「DOHA(Direction of Healthcare Activities)」と呼ばれる上位病院による下位病院の指導が実施されている。本稿では、DOHAの実施体制が確立できた背景、拡大の変遷を追跡し、それらに影響を及ぼしたと考えられる要素を明らかにする。また、研修実施と現場の改善を結びつけるために必要な要素を明らかにする。</p><p>方法</p><p>  1997年から2015年の間に発出されたベトナム保健省作成の政策文書、ベトナムの中央病院であるバクマイ病院のDOHAの活動記録、JICA報告書、国立国際医療研究センター発行のテクニカルレポートと内部会議資料をレビューした。</p><p>結果</p><p>  ベトナムでは中央病院を中心とした医療ヒエラルキーに基づいた医療提供が行われ、その延長でDOHAもデザインされた。まず下位病院への研修開始前よりバクマイ病院自身の専門医の拡充、設備投資、臨床能力の強化が行われ、その後DOHA開始のために保健省からハイレベルな政策文書が発出されていた。それに呼応するようにバクマイ病院でDOHAが開始された。 </p><p>  DOHAを促進するため、保健省より政策文書が継続的に出されていたが、政策文書の発行のみではDOHAの活動拡大は限定的で、バクマイ病院の研修数が増加した時期には体制整備、自主財源の拡大などがみられた。</p><p>  下位病院における主体的なDOHAの拡大は地域差が大きく、概して南部の医療機関が活発な活動をみせていた。研修の実施方法は、研修実施を現場のパフォーマンス向上につなげるため、上位病院の医師が下位病院で勤務しながら現場の指導を行う1816プロジェクトや研修実施と機材提供をパッケージング化して展開するサテライト病院プロジェクトが開始された。</p><p>結論</p><p>  ベトナムでのDOHAのような制度が成立できた要素には「強力なトップダウンによる政策実施」や、「医療提供ヒエラルキーを医療人材の育成にも活用していること」、「下位病院への研修展開以前に上位病院の能力強化が行われていた」ことなどが考えられる。</p><p>  一方で活動拡大のためには、「研修実施の体制整備や継続性のある財源確保」、「下位病院からのボトムアップ力とそれを政策誘導するメカニズム」が必要な要素であると考えられる。</p><p>  研修の実施を現場のパフォーマンス向上に結び付けるためには、的確な現場の実態評価に基づく環境整備や長期的なサポート体制を準備するなど研修以外の要素を組み合わせたアプローチが必要であろう。</p>

収録刊行物

  • 国際保健医療

    国際保健医療 32 (2), 95-108, 2017

    日本国際保健医療学会

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