原発性肝癌の早期診断への人間ドック健診の寄与 -健診で発見された原発性肝癌と自覚症状を呈し受診した原発性肝癌との相違-

書誌事項

タイトル別名
  • Examination in Ningen Dock Enhances Rate of Early Diagnosis of Hepatocellular Carcinoma
  • ゲンパツセイ カンガン ノ ソウキ シンダン エ ノ ニンゲン ドック ケンシン ノ キヨ ケンシン デ ハッケン サレタ ゲンパツセイ カンガン ト ジカク ショウジョウ オ テイシ ジュシン シタ ゲンパツセイ カンガン ト ノ ソウイ

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抄録

目的:健診の目的のひとつは悪性腫瘍の早期発見である.健診で発見された悪性腫瘍が,自覚症状を呈した後診断された悪性腫瘍に比しどの程度生存率が良いのかは不明確な点も多い.そこで健診で発見された原発性肝癌と自覚症状を呈し受診した原発性肝癌の臨床背景の違い・予後の違いを明らかにすることを目的に本研究を行った.<br>方法:当院にて人間ドック健診あるいは肝臓外来での定期健診にて発見された原発性肝癌167例(定期健診群)と腹痛・腹部不快感・食欲不振等を主訴に受診した87例(自覚症状群)につき,臨床的特徴・予後をretrospective cohort studyにて検討した.肝がんのステージは,1)最大径2cm以下,2)単発,3)脈管浸潤なしの3項目により判定した.すなわち,3項目がすべて満足された場合をステージ1,2項目が満足された場合をステージ2,1項目が満足された場合をステージ3,すべて満足されなかった場合をステージ4とした.臨床的特徴はMann-Whitney試験にて検討し,生存率はKaplan-Meier法にて比較した.<br>結果:1. 各群での臨床的特徴:定期健診群は男性126例,女性41例,年齢の中央値65(18~81)歳,アルブミン3.6(2.4~5.1)g/dL,総ビリルビン値1.0(0.3~3.3)mg/dL,血小板 9.7 (1.9~49.0)×104/μL,AFP26(1~739)ng/mLであり,原発性肝癌のステージ(1/2/3/4)はそれぞれ84,57,21,8例であった.一方,自覚症状群は男性36例,女性51例,年齢の中央値62(38~77)歳,アルブミン3.4(2.4~5.0)g/dL,総ビリルビン値1.1(0.3~18.0)mg/dL,血小板 9.1(3.1~33.6)×104/μL,アルファフェトプロテイン(AFP)33(2~47,000)ng/mLであり,HCCのステージ(1/2/3/4)はそれぞれ5,11,51,20例であった.自覚症状群では肝がん進行例,肝機能悪化例,女性が多くみられた.2. 各群での予後:定期健診群での累積生存率は,1年94.6%,3年76.2%,5年64.8%であり,一方自覚症状群での累積生存率は,1年60.2%,3年31.5%,5年14.4%であった(p<0.001).<br>結論:原発性肝癌にて長期生存を得るためには定期健診により無症状時期に肝がんを発見することが肝要であった.

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