Euplexidia(ホソバミドリヨトウ属)の再検討

書誌事項

タイトル別名
  • Notes on the Genus Euplexidia HAMPSON, with Descriptions of Four New Species and One New Subspecies (Lepidoptera, Noctuidae, Amphipyrinae)
  • Euplexidia(ホソバミドリヨトウ属)の再検討〔英文〕
  • Euplexidia ホソバミドリヨトウゾク ノ サイケントウ エイブン

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抄録

本邦のホソバミドリヨトウは永らくヒマラヤのEuplexia literata(MOORE)に同定されてきたが,最近になって私は,これが真のliterataとは異なる種であること,またその所属もEuplexidia HAMPSON,1896に移さねばならないことに気付いた,本報では,我国のホソバミドリヨトウをはじめとして本属の4新種を記載したほか,従来Trachea-Euplexia群に置かれていた2種をこの属に移し,まタイ北部からliterataの1新亜種を記載した.本文にも記したように大陸の一部の種について同定上の問題が残っており,それらでは将来学名の変更が必要になるかもしれない.本報で扱った7種1亜種は以下の通り.Euplexidia noctuiformis HAMPSON, 1896[アッサム,タイ北部(未記録)] Euplexidia exotica sp. n.[台湾] 中部の阿里山山麓,十字路で得た1♂しか見ていない. Euplexidia pallidivirens sp.n.[台湾] 日本のホソバミドリヨトウと外観ではほとんど区別できない,台湾にも次種を産するので,同定には注意を要する. Euplexidia angusta sp. n.ホソバミドリヨトウ[日本,台湾] 本属中我国に産するものは本種である.前種よりもやや色調が濃く,前翅亜外縁の白色部がやや目立つほか,前翅も幾分幅狭く感ぜられるが,正確な同定には交尾器の検査が必要である.前3種に近縁であるが,本種では♂交尾器uncusの背面に剛毛の東を持たず,harpeも太いので,慣れれば解剖しなくても外部からの検鏡で同定できる.台湾では前種と混棲するほか,中国大陸にも分布するものと思われ,陳(1982)が図示した標本は本種のように判断される.Euplexidia literata literata(MOORE, 1882), comb. n.[シッキム,ネパールEuplexidia literata thailandica ssp. n.[タイ北部]Euplexidia illiterata sp. n.[ネパール]これら3つのタクサにはなお未解決の問題が残っている.すなわち,MOORE(1882)は外観のよく似た2種,Dianthoecia literataとD. venosaをともにシッキムから記載しており,これらの同定にはタイプとの比較が必要であるが,今回は成し得なかった.本報ではネパールからタイにかけて産するものをliterataに,またネパールで秋に得られているものを新種とし,venosaについては触れなかった.E. benecripta (PROUT,1928), stat. & comb. n.[スマトラ]本種はスマトラからliterataの亜種として記載されたものである。♂交尾器の構造は本属中特異であるが,♂交尾器vesicaや,♀交尾器の形状からEuplexidiaに属するものとした.以上のほか,ここでは扱わなかったが,ボルネオのTrachea albiguttata(WARREN, 1912)もHOLLOWAY(1976)に図示された♂交尾器の形からみて,本属に連なるものと思われる。しかし,BOURSIN(1964)によってネパールから2頭の♀で書かれた? Euplexidia violascensについては,交尾器も図示されず,また実見もしていないので除外した.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 38 (2), 93-105, 1987

    日本鱗翅学会

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