Andrioplecta属(鱗翅目:ハマキガ科)の分類学的再検討

  • 駒井 古実
    Environmental Planning Department, Osaka University of Arts

書誌事項

タイトル別名
  • Taxonomic revision of the genus Andrioplecta Obraztsov (Lepidoptera : Tortricidae)
  • Andrioplecta属(鱗翅目:ハマキガ科)の分類学的再検討〔英文〕
  • Andrioplectaゾク リンシモク ハマキガカ ノ ブンルイガクテキ サ

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説明

Andrioplecta属は1968年, ObraztsovによりLaspeyresia pulverula Meyrickを模式種とする単型属として創設された.その後,その属はほとんど注目されず,わずかにRazowski(1977)が世界のハマキガ科の属のカタログのなかでとりあげただけである.著者によるアジアのヒメハマキガ類の分類学的研究の中で,本属の上記の模式種以外に5新種を含む11種が追加されることが明らかになった.本論文ではこの属の再記載,種の記載,再記載を行うと共に,属の分類学的位置と単系統性,種間の系統関係についての考察を行った. Andrioplecta属はヒメハマキガ亜科(Olethreutinae), Grapholitini族に所属し,その中でStrophedra属ともっとも近縁である.これら2属はa)雌の後翅の翅刺は2本, b)雌交尾器のductus bursaeは細くて,ほとんど全体が硬化する,という2つの新形質を共有している. Andrioplecta属の単系統性は1)前翅の後縁1/3に黒褐色の斜横紋をもつ,2)雄後翅はRs脈を欠く,3)後翅のR_1脈は中室の1/2-2/3から出て,Sc脈と融合する,4)雌交尾器のcorpus bursaeの後腹面部からbulla seminalisがでる,という4つの固有新形質により証明される.種間の系統関係は図15に示した. Andrioplecta Obraztsov 1. oxystaura (Meyrick), n. comb. 以下の3種では前翅の黒褐色の斜横紋は明瞭で長い.開張:9-10mm.次種に酷似する.次種と同様雄交尾器tegumenの側面部に耳状のフラップをもつが,次種とはcucullusの外面から生じる1-2本の刺を有すること, aedeagusに3-4本のcornutiを有することで区別できる.雌では次種と区別できない.分布:タイ,中国. 2. suboxystaura Komai, n. sp.開張:10-11.5mm.分布:タイ. 3. phuluangensis Komai, n. sp.上記2種に似るが本種のほうがやや大型(開張:12.5mm).雄は未発見.分布:タイ. 4. pulverula (Meyrick)開張:10-13.5mm,本種は後翅の中室に細長い白色斑を有すること,前翅の黒褐色の斜横紋は不明瞭で通常後縁に達しないことで,他種と区別できる.幼虫はナラ類に寄生するタマバチのゴールを食する.分布:インド北部,朝鮮,日本. 5. moriutii Komai, n. sp.開張:11.5mm.前翅基部に小黒点を有すること,後翅に大白斑をもたないことで,他種から区別できる.雌は未発見.分布:タイ. 6. rescissa (Meyrick), n. comb.開張:14mm.次種に似る.本種と次種の雄後翅には,大きな白斑がある.次種とは前翅肛角付近の黒褐色紋と斜横紋とが接近していること,雄後翅の外縁は曲がりくねることで区別できる.幼虫はCynometra cauliflora (マメ科)の種子を食する.分布:ジャワ. 7. leucodora (Meyrick), n. comb.開張:13mm.幼虫はカイガラムシの一種を食する.分布:フィリピン. 8. subpulverula (Meyrick), n. comb.開張:12-14mm.前翅のほとんど全面にまばらに黄土白色点が散布されること,斜横紋が大変不明瞭であることで,他種から区別できる.幼虫はParashorea属, Dipterocarpus属(フタバガキ科)の種子を食する.分布:ジャワ,マレーシア. 9. shoreae Komai, n. sp.開張:雄,12-13mm,雌12.5-14mm.次の4種と近縁である.雄交尾器のaedeagusの前背部に略卵形の骨片をもつのが特徴である.幼虫はShorea属, Dipterocarpus属(フタバガキ科)の種子や実生を食する.分布:タイ,マレーシア,ボルネオ. 10. sp. A 開張:14mm.前種と区別できないが,標本の状態の悪い雌1頭に基づく上に,前種の分布域とは遠く隔たっているので同一種にしなかった.分布:日本. 11. sp. B 開張:11.5mm.明らかに新種であるが,標本の状態がよくないので,命名しなかった.雄交尾器はA. shoreaeに似るが, aedeagusの前背部には略卵形の骨片を欠いている.雌は未発見.分布:タイ. 12. dierli Komai, n. sp.外見はA. pulverulaに似るが,後翅中室の白色斑を欠いている.幼虫はShorea属(フタバガキ科)の種子を食する.分布:ネパール,インド北部.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 43 (3), 151-181, 1992

    日本鱗翅学会

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