シジミチョウの内部寄生蜂ツバメシジミチビアメバチMelalophacharops everese(Uchida,1957)によるヤクシマルリシジミ卵への寄生例

書誌事項

タイトル別名
  • A record of a koinobiont endoparasitoid wasp, Melalophacharops everese (Hymenoptera, Ichneumonidae), attacking eggs of a lycaenid butterfly, Acytolepis puspa

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説明

和歌山県田辺市天神崎海岸沿い道路傍の野生ノイバラに産卵されていたヤクシマルリシジミの野生卵7個を採取し,最初から密閉容器内で飼育した。孵化した幼虫2個体はノイバラ,5個体にはヤマモモの新葉を与えて成育させた結果,ノイバラ飼育の1個体に,前蛹化直前の終令幼虫段階で著しい体長の縮みと体色の黒褐色化を認めた。引き続きノイバラ飼育1個体とヤマモモ飼育4個体が同様の状態を示したため,これら全6個体を小さな密閉容器へと移して観察を続けていたところ,約3か月後に最初の個体から寄生蜂が羽化脱出した。引き続き同じ寄生蜂2個体が発生した段階で,まだ寄生蜂が出ない個体共々冷凍庫で殺虫処理をして寄生蜂を標本にした。本種はその形態観察から,すでにヤクシマルリシジミなど6種のシジミチョウへの寄生記録が知られる飼い殺し型内部寄生蜂ツバメシジミチビアメバチMelalophacharops everese(Uchida,1957)だと同定できた。今回の採集飼育条件から,ツバメシジミチビアメバチはヤクシマルリシジミの卵に産卵したと考えられる。ツバメシジミチビアメバチと同じ亜科や近縁亜科の多くの種は寄主幼虫に産卵し,その産卵管の先端方背面に切れ込みがあるのに対し,本種は産卵管に切れ込みを欠くので,この産卵管形態は寄主卵に産卵することと関連していると考えた。この寄生蜂がシジミチョウ成育過程のいずれの段階で寄生攻撃をするのかはこれまで知られておらず,今回の"ヤクシマルリシジミの卵が寄生されていた"という知見は初めての記録だと思われる。

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 62 (4), 151-155, 2011

    日本鱗翅学会

参考文献 (10)*注記

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