日本の鱗翅目におけるゴール食の習性1. : タイプの異なる3種のゴール

  • 山崎 一夫
    Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences
  • 杉浦 真治
    Laboratory of Forest Ecology, Graduate School of Agriculture, Kyoto University

書誌事項

タイトル別名
  • Gall-feeding habits in Lepidoptera of Japan. I : Three different types of galls
  • Gall-feeding habits in Lepidoptera of Japan(1)Three different types of galls

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説明

日本の鱗翅目におけるゴール食の習性を解明する足掛かりとして,近畿地方において3種のタイプの異なるゴールを野外で観察,サンプリングし,室内で飼育した.1)クヌギエダイガフシ(クヌギ枝のクヌギエダイガタマバチTrichagalma serratae(Ashmead)(ハチ目タマバチ科)によるゴール)からは,4種の鱗翅目,すなわちネスジキノカワガCharacoma ruficirra(Hampson)(ヤガ科),ハマキガ科の一種Andrioplecta pulverula(Meyrick),マダラトガリホソガAnatrachyntis japonica Kuroko (カザリバガ科),キバガ科の一種Hypatima sp.が羽化した.ゴールの固まりの半分以上(58.3-100%)が鱗翅目幼虫に攻撃されていた.最後の2種がゴールから羽化したのは初めての記録である.マダラトガリホソガ幼虫は,木質化したゴール組織を食べ,タマバチの幼虫室を攻撃していた.キバガ科の1種はゴールから羽化したものの,幼虫がゴールを食べていたかどうかは不明である.2)イノコヅチクキマルズイフシ(イノコヅチ茎のイノコヅチウロコタマバエLasioptera achyranthii Shinji(ハエ目タマバエ科)によるゴール)からは,ごく低い率で(0-3.5%),サビイロコヤガAmaya stellata Butler(ヤガ科)幼虫が発見された.本種はゴールの表皮を食害したが,タマバエ幼虫への影響はほとんどなかった.3)ノブドウミフクレフシ(ノブドウ果実のノブドウミタマバエAsphondylia baca Monzenによるゴール)からは,ブドウトリバNippoptilia vitis(Sasaki)が羽化した.本種の幼虫1個体は1個のゴールで発育を完了した.本種の攻撃がタマバエの羽化より前の場合,タマバエ幼虫は本種のゴールへの加害により死亡していた.攻撃率は52.9%であった.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 54 (1), 31-39, 2003

    日本鱗翅学会

参考文献 (38)*注記

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