アサマシジミ幼虫と随伴アリの体表炭化水素プロフィール

  • 大村 尚
    Graduate School of Biosphere Science, Hiroshima University
  • 渡邊 通人
    Laboratory of Natural Science for Coexistence of Humans and Nature, Nonprofit Organization Mount Fuji Nature Conservation Center
  • 本田 計一
    Graduate School of Biosphere Science, Hiroshima University

書誌事項

タイトル別名
  • Cuticular hydrocarbon profiles of Lycaeides subsolanus larvae and their attendant ants

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抄録

アサマシジミ老齢(3〜4齢)幼虫は数種のアリと任意の共生関係を築いており,山梨県ではトビイロケアリやクロヤマアリ等の随伴が観察される.野外採集したアサマシジミ3・4齢幼虫とこれら随伴アリのワーカーから体表炭化水素(CHC)を抽出し,GC-MSでその化学組成を調べた.2種の随伴アリは種特異的なCHC組成を示し,トビイロケアリの主要成分は炭素数29以上の分枝アルカンであるのに対して,クロヤマアリの主要成分は炭素数27・29の直鎖アルカンおよびアルケンであった.アサマシジミ幼虫のCHC組成は3齢および4齢幼虫で互いに酷似していたが,随伴アリのそれとは著しく異っていた.幼虫抽出物は11種類の直鎖アルカンと4種類の分枝アルカンを含んでおり,その主要成分はnonacosane,pentacosane,heptacosane,hentriacontaneであった.アサマシジミ幼虫は近縁のミヤマシジミ幼虫と類似のCHCプロフィールを示した.先行研究において,ミヤマシジミ幼虫のCHC組成は幼虫の齢や随伴アリの種類に応じて変化しないことを見いだしている.これらの事実から,アサマシジミ幼虫もミヤマシジミ幼虫と同様に生得的なCHC組成を維持したままアリとの共生関係を構築していると考えられる.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 63 (4), 186-190, 2012

    日本鱗翅学会

参考文献 (13)*注記

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