「Mirror Box中の利き手の円描画動作が,非利き手に誘発する筋活動について」

書誌事項

タイトル別名
  • Muscle action potential of non-dominant induced by circle drawing task of dominant hand with or without Mirror Box
  • Mirror Box チュウ ノ キキテ ノ エン ビョウガ ドウサ ガ ヒキキテ ニ ユウハツ スル キン カツドウ ニ ツイテ

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抄録

1995年にRamachandranらによって報告されたMirror Box法においては,鏡に映る反転像を見ながら手を動かすと,反対側の幻肢痛の寛解や運動麻痺の軽減が起こるとされ,心身の健康回復に大きく寄与している.Mirror Box使用時に起こる脳内の興奮についてはいくつかの研究がなされているが,末梢における神経や筋での変化を調査したものはない.<br>そこで今回我々は,Mirror Box使用中の筋活動電位の変化を調べる目的で,健常成人男性(19名)を対象として,Mirror Boxの鏡に映る像を見ながら,A4用紙上に4個の円(直径6.3cm)を利き手で描く円描画課題遂行時の,利き手及び非利き手の手内在筋(第I背側骨間筋部)から筋活動電位を導出した.<br>非利き手の筋活動電位は,Mirror Boxを使用しない時には小さかったが,使用した時には著明に増加した.この筋活動電位は,安静時で平均振幅値が約2.1μVに対し,円描画課題遂行時には約5.6μVとなり2倍以上の増加を示し,5倍以上となる高い値を示す被験者も数人いた.また,非利き手の筋活動電位は,円描画課題の進行の時間経過とともに増加した.この増加はMirror Boxを使用しない時にも観察されたが,Mirror Boxを使用した時に特に顕著であった.一方,利き手の筋活動電位は,Mirror Boxの使用時が有意に低く,円描画課題遂行時の時間経過に伴う変化は示さなかった.<br>これらの結果から,鏡に映る反転像を見ながら利き手を動かしている時,Mirror Box内で安静を保っているはずの非利き手には,大きな筋活動電位を発生させる興奮が脳から伝達されていると推察された.今回の結果は,運動機能に対する脳の役割,心身健康並びにMirror Box法の治療効果の機序を解明する新しい糸口となると考えられる.

収録刊行物

  • 心身健康科学

    心身健康科学 6 (1), 1_23-1_29, 2010

    日本心身健康科学会

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