鉄欠乏条件におけるシロイヌナズナの光合成電子伝達の解析

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タイトル別名
  • Analysis of photosynthetic electron transport in Arabidopsis thaliana under iron deficiency

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抄録

鉄は植物の微量必須元素であり,高pH 条件(野外では石灰質アルカリ土壌等)では不溶態になる.したがって,鉄の化学的形態が作物の生産性に大きく影響する.また,鉄は葉緑体において,電子伝達や活性酸素種(ROS)除去等に関わるタンパク質の補因子として必要である.さらに,葉緑体自身が主要なROS発生装置であることから,鉄欠乏時における葉緑体機能の維持は光障害を避けるためにも重要である.本研究では,鉄欠乏によるシロイヌナズナの光合成装置の障害機構の解明のために,葉における光合成電子伝達を非侵襲的に測定することが可能なクロロフィル蛍光の解析を行った.厳しい鉄欠乏処理を行った植物体は既にクロロシスを起こしており,光化学系II(PSII)は深刻な障害を受けていた.一方,穏やかな鉄欠乏処理を行った植物体では,PSIIの障害は認められなかったが,クロロフィル蛍光の非光化学消光(過剰な光エネルギーを熱散逸するPSIIの主要な光障害回避機構)が低下していた.以上のことから,本研究は,深刻な鉄欠乏症が認められる状態よりも前から,光合成電子伝達が鉄欠乏の影響を受けていたことを明らかにした.

収録刊行物

  • 作物研究

    作物研究 59 (0), 11-15, 2014

    近畿作物・育種研究会

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