乳癌における組織型と予後の検討

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  • STUDIES ON HISTOLOGICAL TYPE AND THE PROGNOSIS OF BREAST CANCER

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福島県立医科大学第2外科における過去20年間の女性初発乳癌について組織型からみた遠隔成績を検討した.他院で生検を受けたものを除く222例の乳癌取扱い規約分類による組織型別頻度は,乳頭腺管癌64例28.8%,髄様腺管癌66例29.7%,硬癌73例32.9%,特殊型19例8.6%であった.これらのうち通常型乳癌3型の累積実測5年生存率は乳頭腺管癌77.4%,髄様腺管癌72.8%,硬癌66.6%であり, 10年生存率は乳頭腺管癌77.4%,髄様腺管癌61.7%,硬癌51.0%であった.また相対5年生存率は乳頭腺管癌80.7%,髄様腺管癌76.0%,硬癌70.9%, 10年生存率は乳頭腺管癌85.9%,髄様腺管癌68.7%および硬癌58.6%であった.すなわち乳頭腺管癌に比べ髄様腺管癌さらに硬癌の方が予後不良であった.そこで硬癌の予後不良の原因を明確にすべくTnm各因子と組織型との関係を検討した. T因子では乳頭腺管癌に比べ髄様腺管癌,硬癌の方にT3, T4症例が多く, n因子でも髄様腺管癌,硬癌の方にn(+)症例が多かった. m因子は髄様腺管癌,硬癌にのみ遠隔転移が認められた.したがってstageと組織型との関係についてみると乳頭腺管癌ではTISおよびstage Iの占める割合が多く,髄様腺管癌と硬癌ではstage IIIおよびstage IVの占める割合が多かった.また治癒切除率では乳頭腺管癌100.0%に比べ,髄様腺管癌89.4%,硬癌89.0%と低い成績であった.この局所病像における進行性と遠隔転移が他の組織型に比べ多いことが硬癌の予後を不良としている原因であろうと思われた.以上のように乳癌取扱い規約分類による組織型別の予後検討の結果,硬癌は他の組織型の癌に比べより進行性の病像にあたり,生物学的悪性度が高いと言える成績が得られた.

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