肝血管肉腫の1例

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タイトル別名
  • ANGIOSARCOMA OF THE LIVER (A CASE REPORT)
  • カン ケッカン ニクシュ ノ 1レイ

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抄録

肝の血管肉腫はきわめて稀なもので, Edmondsonによれば肝腫瘍309例中1例とのべている.われわれは本症の1例を経験したので報告し,文献的考察を加えた.症例は64歳の男で,来院の数カ月前より,右季肋部痛,肝腫瘤,発熱をきたし来院し,超音波検査,肝CTスキャソ,腹腔動脈造影などにより肝嚢胞を疑ったが,発熱が続き,臨床検査所見より肝嚢胞の感巣と診断し,開腹の結果,肝右葉に双手拳大の腫瘤を認め,生検により肝血管肉腫と診断した.全身状態不良のため,試験開腹術に終り,術後制癌剤を投与したが,術後40日で死亡した.<br> 肝血管肉腫(Angiosarcoma), malignant hemangiosarcoma, hemangioendothelioma, Hemangioreticuloendotheliomaとも呼ばれ,腫瘍細胞の形態と配列とが星細胞ないしは類洞内皮に類似しており,肉眼的な形態的特徴より海綿状血管腫型と充実型とに大別されている.本腫瘍をInfantile type, Adult typeとに分けられているが,両者の間に臨床像,組織像が類似している所が多いが,臨床経過には相違があり, Infantile typeを独立した疾患と見倣すものもいる.腫瘍の発生原因としては先天性素因のほかに,肝硬変,肝外傷,トロトラストのほか塩化ビニール・モノマーとの関係がのべられている.本腫瘍の発育はきわめて速く,病脳期間も短く,症状の発現は急激であるが,諸腫の検査により肝腫瘍の診断は可能である.しかし,確診には病理組織診によらねばならない.予後はきわめて不良であり,多くの症例は発症後6カ月~1年以内に死亡している,治療法としては肝葉切除術が適応であるが, Infantile typeを除いては長期生存はない.姑息的治療として,制癌剤の投与ならびに放射線治療が行なわれているが,効果はあまり期待できない.

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