食道並びに食道噴門癌に対する非開胸的翻転抜去法

書誌事項

タイトル別名
  • EXPERIMENTAL AND CLINICAL STUDIES ON THE STRIPPING METHOD OF THE ESOPHAGUS
  • ショクドウ ナラビニ ショクドウ フンモン ガン ニ タイスル ヒ カイキョウ
  • AN INVERTING STRIPPING RESECTION OF THE ESOPHAGUS FOR CARCINOMA WITHOUT FORMAL THORACOTOMY
  • 食道ストリッピング法に関する実験的,臨床的研究

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抄録

著者らの創案した非開胸的食道翻転抜去法(食道ストリッピング法)の妥当性を解明すべく,犬および剖検例で食道抜去時の縦隔肋膜損傷の有無並びに後縦隔内出血等の問題点を検索し,合わせて食道の動脈分布について研究を行った.その結果,食道抜去後の肋膜損傷を実験群の45%に認めたが,その程度は3.0cm以下の裂傷であり,後縦隔内出血も軽微で,特に一時的ガーゼタンポンによって同部の出血量を約1/3に減少させることができることから,本法の臨床応用への可能性が実証された.本法は非開胸下の手術法であるのでriskの大きい症例,特に低肺機能の症例にも手術適応を拡大し得るが, 1973年以降独自のRisk判定基準をもとに症例を選び, 24例に対して本法を施行した.低肺機能あるいはpoor riskのため開胸不能と考えられる食道癌症例に対する本法の適応を知る目的で,同時期の開胸下食道癌根治手術施行20例と比較検討を行った.手術時間,術中術後出血量の比較では本法の手術侵襲は少ないことが確認され,術後の呼吸循環機能,血液ガス・酸塩基平衡,生化学的検査値の変動も軽微で回復過程は良好であった.術後肺合併症も開胸術施行例に比べて,その発生頻度は低く本法の有用性が示唆された.手術死亡は24例中5例(20.8%)であるが,うち4例は前期手術例で,後期では12例中1例(8.3%)と手術成績は向上した.遠隔成績は現在2例の長期生存例(5年以上,7年以上)を得ており,ほぼ満足し得るものである.本法の唯一の欠点は胸腔内リンパ節を郭清できない点にあるが,一方早期回復が得られ,経口摂取が可能であるという優れた利点がある.姑息的手術ではあるが,低肺機能症例に対しても手術適応を拡大することが可能で,単なるバイパス手術を比べ,より延命効果を期待できる新しい術式である.

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