後腹膜原発嚢状リンパ管腫の1例と本邦報告例の検討

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タイトル別名
  • A CASE REPORT OF RETROPERITONEAL CYSTIC LYMPHANGIOMA AND REVIEW OF 61 CASES IN JAPAN
  • コウフクマク ゲンパツ ノウジョウ リンパカンシュ ノ 1レイ ト ホンポウ

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抄録

後腹膜より発生した嚢状リンパ管腫の1例を経験した.症例は63歳の女性で偶然腹部腫瘤を指摘されて来院した.腫瘍は腹腔動脈幹付近の後腹膜より発生し, Winslow孔後面を通って右側に発生した単房性リンパ管腫と,胃小弯側に沿って噴門から幽門にかけて発育した多房性のもの,及び横行結腸間膜に発生したものが合併した症例であった.他臓器との剥離は容易であり,この3つの腫瘤を個別に摘出した. 1981年までに本邦で報告された60例と自験例の計61例につき,文献的考察を行った.後腹膜より発生したリンパ管腫は報告も少く,そのほとんどが嚢状であり,他の部位に発生するリンパ管腫とは若干異なっている.その年齢分布を見ると,生後5日目から66歳に至る全年齢層にわたっているが,最近では小児報告例が増加している.男女差はなく,無痛性腫瘤に気付いて診療機関を訪れる症例が約半数で,次いで嚢腫内に感染,出血等を来して疼痛を訴えるものが約1/3であった.術前診断を後腹膜腫瘍としている症例が約半数であるが,最近の画像診断技術の発達とともに診断が正確になって来ている.大半は全摘出に成功しているが,発生部位,他臓器との関係により部分切除あるいは姑息的手術にとどまった症例もあった.腹部腫瘤を認めた症例で, CTスキャン,超音波診断等で,均一なwater densityの嚢腫状病変を認めた場合,本症を念頭に置く必要があると考える.

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