悪性疾患患者におけるT細胞の動態

書誌事項

タイトル別名
  • THE CHANGE OF THE RATIO OF T-CELL IN PATIENTS OF MALIGNANT DISEASES
  • アクセイ シッカン カンジャ ニ オケル Tサイボウ ノ ドウタイ トクニ イ
  • ESPECIALLY IN THE GASTRIC CANCER
  • 特に胃癌患者を中心として

この論文をさがす

抄録

悪性疾患患者において,腫瘍の発育・増大には,細胞性免疫能が関与している事は,最近の免疫学の進歩により,疑いのない事実とされている.この細胞性免疫能には, Tリンパ球・Bリンパ球・マクロフアージを始め,種々の免疫担当細胞が関与しているが,その主役をなすものはTリンパ球である.故に, Tリンパ球の生体における変動は,悪性疾患患者において,生死にかかわる問題である.そこで,著者は,胃癌患者を中心として,悪性疾患患者の予後を推定すべく,患者の末梢血より,リンパ球を分離し, T-cel・B-cellの識別を行い,種々の面から検討を加えた.<br>T-cel・B-cellの識別法は, Conray Fi-Collによる比重遠心法にて,末梢血よりリンパ球を分離し,ヒツジ赤血球とT-cell,補体感作ヒツジ赤血球とB-cellを反応させ,鏡検にて, rosette formationを観察し,判定した.<br>その結果,悪性疾患症例において,経過良好症例のT-cel値は,健康人と同様,良好な値を示した.一方,悪液質に陥った症例での検査値では,著明な低下が認められた.また,手術施行例での術前検査値は,手術根治度の低下とともにT-cell値も低下し, B-cell値が上昇する傾向にあった.更に,腫瘍摘出により, T-cell値は術前より上昇する傾向がみられたが,特に,治癒切除例では,健康人と同程度まで回復する症例が多かった.また,胃癌術後5年以上を経過した長期生存例では,検索したすべての症例で健康人と同等の値が認められた.<br>以上の事から, T-cell・B-cellの値を経時的に観察する事は,悪性疾患患者の予後判定に有意義であるとの結論を得た.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ