ディヴィッド・ギャリックの演技術と新しいリア王像

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タイトル別名
  • David Garrick's Acting Style and the New Image of King Lear
  • ディヴィッド ギャリック ノ エンギジュツ ト アタラシイ リアオウゾウ

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抄録

ディヴィッド・ギャリックは18 世紀における『リア王』の人気を高める上で大きな貢献を果たした。ところが、彼は常にネイハム・テイトの改作に基づく『リア王』を上演しており、最後までハッピーエンドという結末を捨て去ることがなかった。18 世紀当時から「シェイクスピアの偉大な崇拝者にして最良の注釈者」として知られていた彼が、なぜシェイクスピアの原作上演を避けたのか。この問いに対して、これまで多く学者たちが異口同音の回答を繰り返してきた。劇場経営者でもあったギャリックは興行的な成功を確実なものとするために、ハッピーエンドを求める観客の嗜好に迎合したというのである。ところが、ギャリックの『リア王』の上演を検証して行くと、ギャリックが舞台上に結晶化させていたリア像が、彼の演技術と分かちがたく結びついており、しかもハッピーエンドという結末なしには実現不可能なものであったことが明らかになる。本論は、ギャリックが心に抱いていたリアに関する理念や、その理念を舞台上に実現するために用いた彼独自の演技術、そして、彼のリアが観客に与えた衝撃の性質に関する考察を通して、彼のリアが、ハッピーエンドを通して初めて完成するものであり、しかも、単なる大衆への迎合ということではなく、彼自身の役者としての能力を最大限に活かしながら新しいリア像を創造するめの有効な媒体であったことを明らかにする。

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